診療案内
~治りにくい水ぼうそうがありました~
幼稚園の女の子が「水ぼうそう」で来院されました。
典型的な「水ぼうそう」の症状で、水ぼうそうの予防接種はしていません。
水ぼうそうは普通5日間の治療で治りますが、女の子は5日を過ぎても全く治りません。
水ぶくれや発赤、傷が多発してみられていました。
水ぼうそうのお薬が効きませんので、漢方のケイガイレンギョトウ(ツムラ50)というお薬を飲んでいただきました。
このお薬は、皮膚の膿を排出させて発赤を改善し、皮膚の修復をしてくれるお薬です。
飲み始めてから水ぼうそうは治りました。
難しい「水ぼうそう」もあるのですね。私が小児科医になって29年たちますが、この女の子が初めての「難活性の水ぼうそう」でした。
急激なお天気変化と「アレルギー症状」
最近急に気温が下がってきました。猛暑の夏から気温差が著しいものがあります。
気温の下がり方が大きいせいで、増えているお子さんの病気が3つあります。
*アレルギー性鼻炎
気温の変化のが大きいと、秋でもアレルギー性鼻炎のお子さんが増えます。症状は鼻水・くしゃみ・鼻づまりが主なものです。「ぜん息」のあるお子さんにアレルギー性鼻炎の症状が出始めると、その後から「ぜん息」の症状が出てくる傾向があります。しっかりとアレルギー性鼻炎の治療をして「ぜん息」の発作を予防しましょう。
*ぜん息
急激に気温が下がったり、雨が降ったりとお天気がよくないと「ぜん息」のお子さんは「咳」が出始めます。気温差が大きいと、ぜん息発作を起こしやすくなります。毎年梅雨や秋の台風シーズンに発作を起こす傾向がありますが、今年の秋は気温の急激な変化がぜん息の原因と思われます。多くのお子さんが発作を起こしていますが、秋のシーズンは特に頑張って治療しましょう。
*アトピー性皮膚炎
例年、冬になるとアトピー性皮膚炎のお子さんはヒフの症状が悪化しますが、今年の秋は急激に気温が下がり症状がヒフに表れ始めています。本来の秋ですと保湿剤がメインの治療で十分ですが今年は少し早目にステロイドの塗り薬を使用した方がよいでしょう。
小児皮ふ細菌感染症の対処法
~帝京大学 渡辺普一先生講演会より~
①乳児多発性汗腺膿瘍
赤ちゃんの頭部に多発してできる「かたまり」で、別名「あせものより」というものです。
黄色ブドウ球菌に感染してできたもので、抗生剤の内服で治りますが、ぬり薬では治りません。
②SSSS(ブドウ球菌性熱傷様ヒフ症候群)
・黄色ブドウ球菌の「毒素」が原因でおこる重症細菌感染症です。
発熱で始まり、目やに、鼻汁、口周囲が赤くなり放射状の亀裂がみられ、全身に様々な発疹がみられます。
・「擦過痛」が特徴で、ちょっとさわっただけでも痛がり、ちょっとこするだけでも皮ふがむけてしまいます。
・「とびひ」の治療中に生じることが多いので、しばしば「薬疹」と間違われますが、この時ステロイドの内服を受けると「死亡してしまう」ことがあるので、
「とびひ」のお子さんには特に注意が必要です。
(赤ちゃんは基本的に「薬疹」が少ないのが特徴です。)
③MRSA
・これは抗生剤が効きにくいタイプの黄色ブドウ球菌で、とびひの原因としてよくみられます。
ゲンタシン軟膏やアイロタイシン軟膏では効果がありません。
・ナジフロキサシン(アクアチム軟膏やクリーム)でしたら「MRSA」にも有効で、「通常のとびひ」と「MRSAのとびひ」に一番効果的です。
・ホスホマイシン(抗生剤)を内服し、数時間後にセフェム系抗生剤かペニシリン系抗生剤をのんで治療をすると改善します。
さらに治りにくければ、8才以上のお子さんではミノマイシンなどの抗生剤やバクタ、リファレピシンなどの内服薬が有効です。
④アトピー性ヒフ炎では
・適切な治療をしているにもかかわらず、急激に「水疱」をともなう発疹が生じた場合、
「とびひ」、「カポジ水痘様発疹症」に注意が必要です。
・不適切なアトピーの治療を繰り返している場合には、医師の指導のもとステロイドのぬり薬で治療を行うことが大切です。
とびひの対処法
~神奈川県立こども医療センター 皮膚科 馬場直子先生 講演会より~
①とびひのところに消毒薬をぬるのは、とびひの部分の皮膚の改善を遅らせてしまうので、よくありません。
②抗生剤のよく効くタイプのとびひは・・・・
・早期に治療を開始すれば、90%は一週間以内に治ります。
・治るまでに、抗生剤の内服は二週間以内で終了できています。
・治療の開始が、とびひになってから7日以上たってしまうと、治るのに時間がかかります。
③抗生剤の効きにくいタイプのとびひは・・・・
・早期に治療を開始しても、治るのに時間がかかります。
・治るまでに、抗生剤の内服を二週間以上必要としました。
・ホスミシン・ミノマイシン・バンコマイシンなどのお薬が、とてもよく効きます。
④とびひは、その原因菌により症状の差があり、注意も必要です。
⑤連鎖球菌性膿か疹(溶連菌が原因のとびひ)は、
1)季節を問わず、一年中みられます。
2)「発熱」・「のどの痛み」・「リンパ節の腫れ」を伴うことがあります。
3)溶連菌が原因ですので、抗生剤の10~14日間の内服が必要となります。
(溶連菌感染に伴う、感染後の糸球体腎炎の出現に注意が必要です。)
4)発疹は「か皮性」で、じくじくしていますが、「水ほう」はみられません。
⑥黄色ブドウ球菌性膿か疹(ブドウ球菌が原因のとびひ)は、
1)初夏から初秋に多くみられます。
2)初めに、鼻の周囲に発疹ができることが多い傾向にあります。
3)重症なタイプでは、「SSSS」と言って、次の症状があらわれます。
(A)顔がむくんだように腫れてきます。まぶたも腫れます。
(B)皮膚が腫れて痛くなります。
(C)関節などの皮膚の摩擦部位に、赤い発疹があるのが特徴です。
(D)外陰部にびらん(ただれ)ができます。
(E)2~3日で症状が急激に悪化しますので、しばしば入院治療が必要となります。
(F)全身状態が明らかに悪いのが、よくわかります。
⑦ゲンタシン軟膏は、ほとんど効きません。
⑧消毒は、とびひには必要ありません。
⑨かゆみを伴う時は、かゆみ止めののみ薬を併用した方が、とびひの「かきこわし」を防ぐことができます。
溶連菌感染症
こどもたちの発熱の中で、ポピュラーな病気です。
典型的なケースでは、発熱、イチゴ舌、発疹をおこしますが、近頃のケースでは下痢や腹痛や嘔吐や悪心などの胃腸の症状が目立つ場合や咳がひどくなり、喘息や咳喘息の発作が悪化したようにみられる場合も多くあります。
綿棒を使ってのどをこすって検査キットで調べると10分~15分で感染しているか否かすぐに判定できます。
昔は診断するのにとても時間がかかり、治療も遅れることが多く、重症化して心臓に障害を起こすリウマチ熱や急性糸球賢炎などを起こしたケースが多くありました。
しかし、現在は検査キットのお陰で、治療がとても早くスタートすることが出来るようになり、重症化するケースは現在ほどんど見られません。
治療は適切な抗生剤を10~14日間内服して、 内服終了後4週間後に尿検査が必要となります。 これは病気がなくなった後に、症状の全くない 賢炎(溶連菌感染後賢炎)を併発することがあり、 必ず尿検査が欠かせません。
食物アレルギーの最近の活題
食物アレルギーの最近の活題
~経皮感作と食物アレルギーを中心に~
島根大学皮膚科 千貫裕子先生講演会
①茶のしずく石けんによる小麦アレルギーは女性が95.9%を占めています。
②1)食物を食べただけでは症状は出ませんが食物を食べた後に運動をした時に初めて症状が出るのが「食物運動誘発性アナフィラキシー」です。
2)「食物運動誘発性アナフィラキシー」は60%が「小麦」によるものです。 小麦による「食物運動誘発性アナフィラキシー」は小麦アレルギーを示す「小麦」や「グルテン」のIgE抗体は約30%しか陽性率がありません。 ところが小麦による「食物運動誘発性アナフィラキシー」は小麦アレルギーを示す「ω-5グリアジン」のIgE抗体では79.6%と高い陽性率を示し、「高分子グルテン」のIgE抗体の」陽性率は18.5%を示しています。 ちなみに、20才以上の「食物運動誘発性アナフィラキシー」の「ω-5グリアジン」の陽性率は「94.5%」と特に高い傾向を示しています。
③1)茶のしずく石けんによる加水分解型小麦アレルギーの主な症状は「眼瞼部位」の腫れと発赤ですが通常型小麦アレルギーは「全身の膨疹(蕁麻疹)」と皮膚症状の発症部位が大きく異なります。
2)通常型小麦アレルギーではIgE抗体は下がってくることはありませんが、茶のしずく石けんによる加水分解型小麦アレルギーでは茶のしずく石けんの使用を中止しますと、IgE抗体は下がってくる特徴があります。
④皮膚の改善が食物アレルギーの改善につながります。 皮膚からの感作が終わって食物アレルギーを起こす前にまず皮膚炎を治すことが大切です。例えば赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の顔の発疹にvery strong class のステロイドの外用薬を使用しても問題はありません。
⑤花粉・食物アレルギー症候群
1)大豆アレルギーは「大豆」を食べておこる「けい口感作」の食物アレルギーと「豆乳」を吸入しておこる「吸入感作」による食物アレルギーがあります。
2)豆乳アレルギーの患者さんの花粉症の合併率は100%陽性です。特にハンノキ特異的IgE抗体(ハンノキ花粉症のアレルギーを示す抗体)の陽性率は100%です。
⑥ラテックスフルーツ症候群
ラテックスのゴムを使用した後に果物を食べると症状が出る食物アレルギーです。
⑦牛肉アレルギー
1)「牛肉の蛋白質」と「カレイ魚卵蛋白質」は交差反応がありますので、牛肉アレルギーの人はカレイアレルギーにも注意が必要です。つまり、牛肉アレルギーの患者さんは「カレイ」と「カレイの魚卵」は食べない方が良いことになります。
2)牛肉アレルギーの症状は「蕁麻疹」や「アナフィラキシーショック」です。
3)B型の血液型の人は牛肉アレルギーを起こしにくい特徴があります。
4)牛肉アレルギーの人はペット(犬)を飼っていることが多い特徴があります。これは、ペットについている「マダニ」にかまれて皮膚感作から牛肉アレルギーを起こしてくるのです。牛肉アレルギーは食べてからアレルギーの症状が出るまでかなり時間がかかるので牛肉を食べた直後とは限らないので注意が必要です。牛肉アレルギーは「マダニ」にかまれておきてくるのです。
5)セツキシマブ(抗がん剤)投与でもアナフィラキシーを起こすことがあります。
じんましん
突然、赤色にもりあがってふくれた発疹がかゆみといっしょに出現するものです。原因の多くは不明なものが多いですが、食物やお薬、溶連菌感染症が原因になることがあります。
治療はかゆみ止めのお薬をのむことです。また発疹が消えるのでまで、お風呂に入らないことです。温めると、じんましんはなかなか消えません。
かゆみ止めのお薬は、眠気がほとんど出ないものもあります。以前のような眠気の心配はいりません。基本的に、ぬり薬の効果は補助的なものとなります。
小児のじんま疹における飲み薬の上手な使い方
① お子さんのじんま疹にはかゆみ止めの飲み薬がよく効きます。じんま疹が 出たらなるべく早く飲み始めるのが「第一のコツ」です。
食物アレルギーによって起こるじんま疹やアナフィラキシーの症状、原因がわからないお子さんのじんま疹にもよく効きます。
② 小児では、眠気や集中力の低下、けいれんの誘発といった副作用の少な い、新しいタイプのお薬をえらぶことも重要です。 これが「第二のコツ」です。
③ お子さんによってはじんま疹のお薬を使用しても改善されない、難治性の 小児慢性じんま疹もあります。
このようなお子さんには新しいタイプのかゆみ止めに加え、本来はぜん息に使われるキプレスというお薬を併用すると改善することがあります。 これが「第三のコツ」です。
咳
乾いた咳と湿った咳
乾いた咳は、たんのからまない咳で、主にぜん息にみられます。
湿った咳は、たんのからむ咳で、主にばい菌感染による気管支炎にみられます。
病気によって、咳の症状に違いがあります。
①ぜん息発作
ぜん息では、咳き込んでおう吐したり、夜間や早朝に咳がひどくなる傾向があります。通常のぜん息は、息を吐く時にゼイゼイ・ヒューヒューと音がして息苦しくなりますが、咳ぜん息ではこれが見られず、ひどい咳だけが主な症状です。
②百日咳
百日咳では、咳き込んだ後、息を吸う時に笛のようなヒューという音が出たり、短い咳こみが連続して突然起きる「発作性」のものがあります。百日咳のみの感染の場合は発熱はみられません。
赤ちゃんは無呼吸発作からけいれん、呼吸停止につながるケースもあるので注意が必要です。赤ちゃんで咳がなかなか止まらなかったり、2週間以上続くようなら百日咳を疑ってみましょう。
ぜん息の薬では効果がありません。
最近では成人でも感染する方が増えてきました。子供のときに接種した三種混合ワクチンの効果が成人になるまで持続しない可能性が指摘されています。
③マイコプラズマ感染症
幼児以上にみられ、百日咳のように咳がひどく2週間以上続くことが多いのですが、息を吸ったり吐いたりする時にヒューという音はみられません。発熱がある場合とない場合があります。発見が遅れるとマイコプラズマ肺炎になることもあります。
ぜん息のお子さんが感染するとぜん息も悪化します。
④溶連菌感染症
咳がひどくなりますが、特にぜん息のお子さんに感染しますとぜん息が急速に悪化します。発熱はある場合とない場合があります。幅広い年齢で感染がみられます。
⑤副鼻腔炎(ちくのう症)
副鼻腔があると咳が長びくことがあります。この場合、長期ののみ薬が必要になります。咳以外に、鼻づまり、鼻汁、いびき、睡眠中の無呼吸、常に鼻をこすっているなどが見られるのも特徴的です。
⑥急性鼻炎(鼻かぜ)
鼻かぜで鼻水が多いと、これがのどの方にまわり結果として咳が出ることがあります。赤ちゃんによくあるケースです。
⑥アレルギー性鼻炎(花粉症)
鼻とのどがつながっているため、花粉症がひどいと咳が出ます。鼻水がのどにまわって出るものと思われます。花粉症の治療で改善します。
発熱
お子さんの体温が37、5゜C以上の場合を発熱といいます。
「注意が必要な発熱」は、次のようなものがあります。
①元気がない
②顔色がよくない
③ぼーっとしている
④おしっこの量がいつもより少ない
⑤水分をとりたがらない
⑥おでこを触ると熱いのに、手足がやけに冷たい
(紫色)
⑦頭痛を強く訴える
⑧吐き気が強い、または頻回におう吐している
⑨夜、高熱で眠れない
⑩けいれんしている
⑪咳がひどく眠れない、または咳き込んでおう吐してしまう
⑫耳だれが多い
⑬機嫌がやけに悪い
⑭胸の痛みが強い
⑮呼吸が苦しい
⑯お腹の痛みが強い
⑰血液の混じった便が出る
⑱出血したような発疹が皮膚に多数見られる
上記の場合には、細菌やウイルスが体のどこかに侵入して症状を出している可能性がありますので、なるべく早急に小児科を受診する必要があります。
逆に上記の①~⑱のような症状を伴わない元気な発熱のお子さんは、様子を見てよい場合があります。
(千葉県では「こども急病電話相談」があるので、「#8000」に電話をかけて相談してみるのもよいでしょう。
「本当に熱がない?」
よくお母さん方は、お子さんの発熱について、「夜は熱が出るけれども、朝と昼は熱がないんです。」と言われることが多いのですが、このようなケースは、「発熱がある」と考えなければいけません。お子さんの熱が下がったということは、朝も昼も、そして夜も発熱がみられない事を意味しています。夜間だけの発熱で、昼は元気であっても、この状況が長く続く時には、お薬の治療が必要になるのです。何らかの病気の原因があって、結果として初めて発熱が見られるのです。
「解熱剤の使い方」
発熱時の解熱剤は、38、5゜C以上の発熱があり、元気がなかったり、夜眠れなかったりしたら、使ってあげましょう。1゜Cでも0、5゜Cでも熱が下がると、お子さんは楽になります。逆に発熱がみられても、元気があってニコニコしている時や、夜よく眠れる時は、使わずに様子をみてもよいでしょう。小児用の適切な解熱剤であれば、どの病気でも使用は可能です。
「熱性けいれんの既往があるお子さん」
熱性けいれんを以前におこしたお子さんは、37、5゜C以上の発熱がみられたら、熱性けいれんの予防治療の坐薬(ダイアップ)を1個挿入します。その後、8時間後に再度同じ坐薬を1個挿入します。こうして2回使用すると、熱性けいれんがおこりやすい、発熱後48時間以内の熱性けいれんの予防ができます。熱性けいれんのお子さんでは、この2回目のダイアップ坐薬を使用した後、30分経過すれば初めて解熱剤が使えるようになります。発熱して間もない時期で、ダイアップ坐薬の予防をせずに解熱剤を使うと、熱が下がって再び熱が上がった時に熱性けいれんをおこしやすくなるので、注意が必要です。
脱水症
脱水症には、点滴治療が不可欠です。
子供の体の中には、大人と比べて多くの水分がたくわえられています。脱水症とは、おう吐したり、下痢が頻回だったり、食欲がなかったりして水分がとれないような時に、子供の体の中にあるべき水分量が著しく減少して、いろいろな症状が出てくる状態をいいます。
①元気がない、ぼーっとしている、寝ていることが多い
②普段よりおしっこの回数や量が少ない
③顔色がよくない
④口の中が乾燥している
(元気な子供の口の中は、かなり湿っているものです)
⑤唇が乾燥している
⑥お腹がへこんでいたり、お腹にしわがいっぱいできている
(元気な子供のお腹は、カエルのように突き出しているものです)
⑦手足が冷たい
⑧手足の色が紫色である
⑨赤ちゃんの頭のてっぺんにある大泉門という骨のない部分がへこんでいる(元気な赤ちゃんでは平らです)
⑩けいれんがみられる
脱水症は、放置しておくと症状が進行するばかりで、改善はしません。脱水症がみられたら、できるだけ早く点滴治療(血管にチューブを入れて、直接体に水分補給をする治療)が必要となります。子供は短時間に発症するので、早期に見つけて、早期に治療が必要です。
脱水症に伴って、体の中の血糖値が下がる低血糖症や、ナトリウムの値が下がる低ナトリウム血症がおこると、場合によっては「けいれん」をおこすことがあります。特に低血糖のけいれんは、脳のダメージが大きいので、すみやかに点滴からのブドウ糖の投与が緊急に必要となります。
①元気がない、ぼーっとしている、寝ていることが多い
②普段よりおしっこの回数や量が少ない
③顔色がよくない
④口の中が乾燥している
(元気な子供の口の中は、かなり湿っているものです)
⑤唇が乾燥している
⑥お腹がへこんでいたり、お腹にしわがいっぱいできている
(元気な子供のお腹は、カエルのように突き出しているものです)
⑦手足が冷たい
⑧手足の色が紫色である
⑨赤ちゃんの頭のてっぺんにある大泉門という骨のない部分がへこんでいる(元気な赤ちゃんでは平らです)
⑩けいれんがみられる
脱水症は、放置しておくと症状が進行するばかりで、改善はしません。脱水症がみられたら、できるだけ早く点滴治療(血管にチューブを入れて、直接体に水分補給をする治療)が必要となります。子供は短時間に発症するので、早期に見つけて、早期に治療が必要です。
脱水症に伴って、体の中の血糖値が下がる低血糖症や、ナトリウムの値が下がる低ナトリウム血症がおこると、場合によっては「けいれん」をおこすことがあります。特に低血糖のけいれんは、脳のダメージが大きいので、すみやかに点滴からのブドウ糖の投与が緊急に必要となります。
水いぼ
伝染性軟属腫といって、円形のきれいな形をした
小さな発疹が体にできるものです。
伝染軟属腫ウィルスが皮膚に感染をおこしているわけですが、治療はトラコマ摂子という特殊なピンセットでつまみとることが一番早く治ります。
つまみとる時に、こどもが少し痛がりますが、その他の治療に比べて再発が少ない最も有効な方法です。
理想的には「5ヶ以内」と発疹の数が少ないうちにとることがこどもの痛みを小さくすることになります。
痛みのない方法としては、お風呂上りにイソジン液を水いぼ部分にぬり、「たこ」の治療で使うスピール膏を水いぼ部分より小さく切っていぼに貼り、絆創膏で固定します。
これを毎日しますと一週間くらいで水いぼがやわらかくなるので、その後はイソジンだけをぬっていきます。そうすると2~3週間後には治ります。
ただしこの方法で改善しない場合は、ピンセットで取ることになります。
いぼ
じんじょう性ゆうぜいといって、いぼのウィルスが
皮膚に感染をおこして出来るものです。治療は液体窒素で発疹の部分を冷却するだけですみます。
これをいぼがなくなるまで、月に3回程度行います。
発疹は結構硬く、発疹の中心部に黒い斑点(出血班)がみられるのが特徴です。
20年前のこどもには、いぼはみられませんでしたが、現代っ子は手の指、足の指、足の裏側などに多く見られます。
新しいアレルギーマーチの概念における食物アレルギー
新しいアレルギーマーチの概念における食物アレルギー
神奈川県立こども医療センター 栗原和幸先生講演会
①抗アレルギー剤のエバステルやシングレアを内服しながら経口免疫療法をした方が治療中の副反応が出にくい傾向にあります。
②偏よらず幅広く食べることで食物アレルギーを抑制出来ます。
③イスラエルでは離乳期から赤ちゃんにピーナッツを食べさせていますのでお子さんにピーナッツアレルギーが少ない傾向にあります。ところが、イスラエルの赤ちゃんが英国に移住した場合は、英国でピーナッツを離乳期の赤ちゃんに食べさせる習慣がありませんので、この場合のイスラエルのお子さんはピーナッツアレルギーが多くなります。
④固形食を生後4~6ヶ月開始されるべきではないですが、それ以上に開始を遅らせてもアトピー性疾患の発症を予防する根拠はありません。
⑤口から食べた食物に関しましては免疫寛容が生じてアレルギーを起こさなくなりますが、経皮感作のような皮膚から食物が入った場合には(食物)アレルギーを起こしてきます。
⑥皮膚のバリア機能障害があるアトピー性皮膚炎のお子さんでは経皮感作によって食物アレルギーを起こしてくるのです。
⑦皮膚の遺伝子異常(フィラグリン遺伝子の異常)がありますとピーナッツアレルギーを起こしやすい傾向があります。
⑧湿疹のある「ぜん息」では食物アレルギーと関連がありますが、湿疹のない「ぜん息」では食物アレルギーとの関連はありません。
⑨お子さんや赤ちゃんに食物アレルギーがあっても母乳を与えているお母さんの食事制限は必要ありません。
⑩お子さんでは皮膚を治さないとアレルギー全体を進行させてしまいますのでまず、皮膚を治すことが大切です。
⑪花粉症がひどくなりますと野菜や果物で食物アレルギーの症状が出る口腔アレルギー症候群が起きてきます。
食物アレルギーによるアナフィラキシーへの対応
食物アレルギーによるアナフィラキシーへの対応
ひやりはっと事例からのメッセージ
藤田保健衛生大学 宇理須厚雄先生講演会
1.食物アレルギーによるアナフィラキシーは
①保育園で5%くらいのアナフラキシーがあります。
②小学生で2.9%くらいのアナフィラキシーがあります。
③学童の食物アレルギーは2.6%でアナフィラキシーは0.14%くらいあります。
④誤食(本来は食物制限のある食物を間違って食べてしまう場合)は保育園で29%発生しています。
2.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
①エビやカニが原因アレルゲンのことが多いです。
②原因食物を食べた後に3~4時間くらい経過して運動をしますと起こすアナフィラキシーです。
(原因食物を食べただけではアナフィラキシーは起こりません。)
③茶のしずく石けんによる小麦アレルギー
女性が95.6%で男性は4.4%で全国で1540名の患者さんがいます。
3.食物アレルギーの対応は
①原因食物の除去
②食物アレルギーの過敏症(アナフィラキシー)に対する緊急対処として
A)皮膚のかゆみや蕁麻疹・口の中のかゆみには抗ヒスタミン剤の内服が必要です。
B)強い蕁麻疹や1回の嘔吐や1回の下痢・間欠的腹痛には抗ヒスタミン剤の内服やステロイドの内服が必要です。
C)全身のかゆみや全身の発赤・全身性蕁麻疹・反復する嘔吐や声がれ・咳き込みにはアナフィラキシーと考えてエピペンが必要です。
D)アナフィラキシーの時には児を横に寝かせて下肢を拳上するように足を高くして寝かせてあげるとよいでしょう。
4.食物アレルギーの急性症状に対する緊急時薬として
A)抗ヒスタミン剤
速効性があり抗ヒスタミン作用が強く鎮静作用の弱いものが適しています。
B)内服ステロイド剤
セレスタミンは使用しないようにしましょう。
なぜならセレスタミンにはステロイドの量が少なく、鎮静作用のある抗ヒスタミン剤が入っているのでアナフィラキシーには適していません。
C)エピペン
5.エピペン
①保険適応になっています。
②お子さんが自分で注射できない時は、代わりに幼稚園や学校の職員の方が注射しても良いことになっています。
(この場合に注射をした職員の方が法律に抵触することはありません。)
救急救命士の方がお子さんに携帯しているエピペンをお子さんの代わりに注射してもよいことになっています。
③エピペンが必要な対象者は次の方です。
A)アナフィラキシーの既往のあるお子さん
B)アナフィラキシーのリスクの高いお子さん
(例えば経口免疫療法を受けている食物アレルギーのお子さん)
6.祖父母宅
食品表示をチェックしてからお子さんの食物を食べさせることが重要です。
食品表示にお子さんのアレルギーを起こす食物が含まれていないかのチェックが必要です。
7.レストラン
普通のレストランはアレルギーの原因物質が混入する可能性が高いので避けましょう。
8.自動販売装置
飲み物がノズルから出る共通のタイプの自動販売機は使わないようにしましょう。
例えばジュースもカルピスも同じノズルから出るタイプですと、カルピスの牛乳成分がジュースが出る時に混入する可能性があります。
9.菓子パン
菓子パンは卵の成分の含有量が大きく違うことがありますので、注意が必要です。
例えばメロンパンにはたくさんの卵が入っています。普通の菓子パンを食べても大丈夫な卵アレルギーのお子さんがメロンパンを食べますと
卵の含有量が多いので卵アレルギーの症状が出ることがありますので、メロンパンは注意しましょう。
10.幼稚園・学校・施設
①園や学校の職員がお子さんの食物アレルギーの情報を共有することが大切です。
例えばお子さんのクラスの担任の先生だけが食物アレルギーのことを知っていても、他のクラスの担任の先生も食物アレルギーの情報を知っていませんと、誤食が起こります。
牛乳アレルギーのお子さんが園のパーティーでお子さんの担任ではない先生にカルピスを与えられてアナフィラキシーを起こすこともあるのです。
②給食の配膳は除去食の方から配膳しますと誤食が防げます。
③食事中と食後に食物アレルギーのお子さんの経過を観察することを怠らないように先生が注意をはらいましょう。
④雑巾を触ったら牛乳アレルギーのお子さんの眼が腫れたこともあります。
これは担任の先生がこぼした牛乳を雑巾で拭きとりよく洗っておきましたが、この雑巾を触ったら牛乳アレルギーの症状が出たのです。
おそらく雑巾に少しだけ牛乳が残っていたのでしょう。
⑤ピーナッツの豆まきや蕎麦打ち体験やうどん作り体験やうどん作り体験・牛乳パック回収などの行事にも食物アレルギーのお子さんは注意が必要です。
食物アレルギー治療における皮膚バリア機能改善の重要性
食物アレルギー治療における皮膚バリア機能改善の重要性
神奈川県立こども医療センター 栗原 和幸先生講演会
1.偏らず幅広く食べることでアレルギー反応を抑制することが出来ます。
2.例えばイスラエルでは離乳期からピーナッツバターを与えていますので、ピーナッツアレルギーが起きません。
ところがイギリスに移住したイスラエルのお子さんはイギリスでは離乳期にピーナッツバターを与える習慣がないので離乳期にピーナッツアレルギーが起きてきます。
3.人工栄養(ミルク)の方が母乳より、アレルギーの要因を示す特異的IgEの値が低い傾向にあります。
牛乳アレルギー(ミルクアレルギー)の予防対策として早期からミルクを飲ませた方が牛乳アレルギーは少ないのです。
4.食物アレルギーから発症するアトピー性皮膚炎もありますが、実はアトピー性皮膚炎から発症する食物アレルギーも大きいのです。
皮膚バリア機能障害をおこしている、アトピー性皮膚炎の治療が食物アレルギーにとってはとても大切なのです。
5.早期発症が持続性のアトピー性皮膚炎はフィラグリン遺伝子異常との相関関係があります。
ピーナッツアレルギーのお子さんでは、健康のお子さんに比べてフィラグリン遺伝子異常がとても多くみられます。
6.アトピー性皮膚炎では非ステロイド系の外用薬は適切ではありません。
7.アレルゲンが皮膚から暴露して経皮感作を起こしますと、食物アレルギーを発症してきます。
皮膚バリア機能の改善(アトピー性皮膚炎の治療)が大切なのです。
8.アレルゲンが経口暴露しますと経口免疫寛容が起こり、食物アレルギーを抑制します。
9.ステロイドの外用薬で皮膚を良くしてからプロトピック軟膏に変更しますとプロトピック軟膏の顔の刺激感は少なくすみます。
10.食物アレルギーを心配して母乳栄養のお母さんが自分の食事制限をする必要はありません。
お母さんが卵1個食べても母乳に出てくる卵は10万分の1という、とても微量でありますので通常は問題はありません。
母乳栄養を与えているお母さんの食事制限は必要ありません。
「食べること」を目指した食物アレルギー治療の実際
同志社女子大学 伊藤 節子先生 講演会
1.乳幼児期の食物アレルギーは80%が遅発性の症状のものでアトピー性皮膚炎が多いです。
2.乳幼児期の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は母乳を飲んでいる赤ちゃんがほとんどです。
この赤ちゃんがミルクを初めて飲むと、急性の重症食物アレルギーの症状が出てきます。(即時型反応:アナフィラキシー)
3.食物アレルギーを発症する乳児はアトピー素因を有しています。
また食物の他に犬の皮くずや猫の皮くずにアレルギーをもっていることが多いです。
4.赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時に、経胎盤性のアレルギーが起きてくる確率は0.5%で出生前にアレルギーが起こることよりも、出生後にアレルギーが起こることが多いのです。
5.離乳食開始前のアトピー性皮膚炎の乳児の食物アレルゲンにアレルギー反応を示してくるのは
①卵
②牛乳(母乳栄養児の方がミルク栄養児よりアレルギーを起こす確率が高いです。)
③小麦
6.食物アレルギーによる症状では、生涯で最初におこるアレルギー疾患のことが多いです。
7.食べることを目標とした食事を考えることが大切で、必要最低限の除去食にしましょう。
8.食物アレルギーはアトピー素因は強いグループですので、早期より室内の環境整備を開始しましょう。
例えば室内ペットの禁止や受動喫煙の回避です。
9.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は
①室内環境の整備
②スキンケア
③適切な軟膏の塗布
④食物アレルギーの疑いのある赤ちゃんは2週間除去してみましょう。
(母乳も除去してみた方が良いこともあります。)
A)これで症状が変わらなければ食物アレルギーの心配はありません。
B)これで症状が軽快しますと食物アレルギーの可能性になります。この場合には母乳を飲ませて症状をみましょう。
10.乳児期発症の食物アレルギーに関与するアトピー性皮膚炎では、年齢とともに食物アレルギーの出やすさが減少してきます。
11.乳児期発症の食物アレルギーで、即時型反応を示したグループは「ぜん息」になりやすいです。
12.お子さんの成長自体が食物アレルギーが治っていく重要な因子です。これは成長に伴ない消化管(腸)の能力が改善してくるためです。
13.食物アレルギーが起こるかもしれないといって、離乳食の開始を遅らせることは必要ありません。
14.家庭料理をベースに食品除去するのが良いでしょう。
15.普通の「お醤油」はアナフィラキシーを起こしていません。
(原材料として小麦が使用されていますが、極微量なので問題はありません。)
16.たまたまアレルギーの検査をして牛乳アレルギーの反応が出たとしても、混合栄養や人工栄養で症状が出なければ継続して良いでしょう。
17.牛乳は加熱しても牛乳アレルギーの原因物質のカゼインが変化しないので注意しましょう。
牛乳は加熱してもこのような状況なので、牛乳アレルギーは卒業しにくいです。
18.大豆アレルギーがあっても味噌・醤油・大豆油は食べられる可能性が多いです。
19.魚アレルギーがあっても、かつおぶしのだし汁は大半が食べても問題はありませんし、缶詰の魚肉は食べられることが多いです。
20.卵ボーロは生卵に近い卵抗原量をもっています。
クッキーの方が卵ボーロよりはるかに卵抗原量が少ないです。
21.牛乳アレルゲン除去ミルクは牛乳アレルギーの原因であるカゼインはほとんどみられません。
22.パンの中の牛乳の抗原量はとても少ないです。
23.うどんの中の小麦よりパンの中の小麦の抗原量が多いのです。
24.固ゆで卵を直後に卵黄と卵白に別々にしますと、卵の抗原量は少ないのですが、茹でた後にしばらくしてから卵黄と卵白を別々にしますと、卵白が卵黄に溶け出してしまい、卵の抗原量が卵黄の中に増えてしまうので、注意が必要です。
25.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎で、食品除去中にもかかわらず症状が悪化した時には、除去食品以外の食品が原因のことがあるので、食物負荷試験が必要です。
26.食品除去を解除している時に、体調不良や運動・入浴・非ステロイド系鎮痛剤などの要素が加わりますと食物アレルギーの症状が再燃や悪化しやすいです。
27.赤ちゃんの家族歴にアレルギーの病気があっても、赤ちゃんの離乳食を遅らせることは必要ありません。
どうしても心配なときにはお魚→お肉→豆腐→卵と離乳食を進めていっても良いでしょう。
28.お肉のアレルギーはないと考えて良いでしょう。
食物アレルギーの新しい考え方
神奈川県立こども医療センター
栗原 和幸先生講演会より
①母乳の中には赤ちゃんのアレルギーを抑える物質が入っています。
②アトピー性皮膚炎を発症してそのままの状態でいますと、食物アレルギーが起こりやすくなります。
③食物アレルギーのアナフィラキシーショックの死亡例は平均で2.9人/年と少なく、食物アレルギーで死亡することは極めて少ないと考えられます。
食事は偏らないで幅広く食べることで、お子さんのアレルギー症状は抑えることができます。
④アレルギーを発症している状態でも、大量に食物を1回食べておくか、または大量の食物を連日食べておくとアレルギーは起こりにくくなります。
⑤アトピー性皮膚炎で食物アレルギーがある場合に、皮膚の状態を治療して良くしておくと、食物アレルギーの症状も気にならない程度に減ってきます。
⑥皮膚の中のフィラグリン遺伝子の異常がありますと、皮膚が保湿することが出来なくなり、皮膚のバリア機能が壊れてしまい、結果としてアトピー性皮膚炎が起こり、皮膚の表面から食物が体の中に入ってきて食物アレルギーが起こるのです。
⑦皮膚の異常がありますと、ピーナッツアレルギーが起こってきます。
⑧食物を口から食べますと(経口暴露)食物アレルギーのお子さんでも慣れが生じて、食物アレルギーを起こさなくなります。
食物に対して耐性が出来るのです。例えば赤ちゃんの時に卵アレルギーだったお子さんが、1才過ぎから卵アレルギーを起こさなくなってくるのは、この耐性が出来るからなのです。
⑨食物が皮膚に付着して皮膚から食物が吸収されますと(皮膚暴露)食物アレルギーを起こしてくるのです。
a)例えばピーナッツオイルをお肌に使用しているお子さんではピーナッツアレルギーが多くなります。(経皮感作)
b)例えば小麦を食べていて全く問題がなかった人が、小麦の入った石けん(茶のしずく石けん)を使ったところ、皮膚から小麦が吸収されて小麦のアナフィラキシーショックを起こしました。(経皮感作)
⑩離乳食が始まる前に皮膚がカサカサしていますと、経皮感作が起こります。
⑪経母乳感作?
母乳は赤ちゃんが飲んでいるので、これがすでに経口免疫寛容の状態で、母乳を飲んでも赤ちゃんはアレルギーにはなりません。
母乳の中にはアレルギーを抑える物質が入っていますので、この母乳を食物と一緒に赤ちゃんが食べることで、赤ちゃんが免疫反応(アレルギー)を起こすのを抑えてくれます。
経口免疫寛容は食べた方が治るということにもなる可能性があります。
⑫急速特異的経口耐性誘導
a)入院しての治療ですが、例えば卵アレルギーのあるお子さんに1日何回も卵を少量から与え始めて、日毎に増やしていき最終的には加熱して卵を1個たべれるようになるものです。(平均14日間で可能になります。)短期間に集中しておこなわれる治療です。
この治療中にみられる食物アレルギーの症状は軽いものがほとんどで、アナフィラキシーのような重症の症状はみられません。(卵・ピーナッツ・小麦)
ただし牛乳の場合少し症状は重く出ることがあります。
b)急速免疫寛容治療で食物が食べられるようになっても、その後もその食物を食べ続けることが必要になります。
そうしますと血液検査の食物のIgE値(アレルギーの反応を示すものです)が次第に下がってきます。
c)急速免疫寛容治療の成功率は100%です。
日常生活で食べれるようにするのが100%です。
d)急速免疫寛容治療はピーナッツアレルギーの場合はピーナッツのIgE値が一時的に上昇しますが、その後に次第に下がってきます。
⑬緩徐特異的経口耐性誘導
a)例えば卵アレルギーのあるお子さんに卵を1日1g食べてそれを一週間継続して、症状が出なければ30%増やして一週間継続します。
このように少量をゆっくり時間をかけて食べる治療法です。
大豆アレルギーなら味噌・しょうゆ・納豆を食べてみるのです。
b)例えば血液検査でIgE値も高値で食物に対してのIgE値も高値であっても、少しずつ食べてみれば意外に食べられるようになるのです。「ちょっとずつ」食べてみるとよいのです。
この時に皮膚にアトピー性皮膚炎がある場合はステロイドの塗り薬の治療でアトピー性皮膚炎を良くしておくとIgE値も食物に対するIgE値も下がってきます。
⑭妊娠中のお母さんの食物除去は不要です。
⑮授乳中のお母さんの食物制限は赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を悪化させることはありません。
⑯ピーナッツアレルギーはピーナッツを赤ちゃんの早い時期から食べていると起こしにくい傾向がみられます。
つまり、食物はなるべく離乳食時期から食べ始めると食物アレルギーを起こしにくくなるのです。
⑰食物アレルギーで最も大切なことは
a)適切なステロイドの塗り薬を使用して皮膚のバリア機能を改善することです。
アトピー性皮膚炎が適切に良い状態にコントロールされていないと食物アレルギーには良くありません。
b)積極的に食物を口から食べることです。食べて治す食物アレルギーということです。
⑱母乳と人工栄養(ミルク)はどちらがアレルギーを起こしやすいかの結論は出ていません。
⑲生後2週間から人工栄養(ミルク)を始めているとミルクアレルギーは起こしません。
⑳乳幼児の「いくらアレルギー」がとても増えています。
赤ちゃんにちょっとだけ周囲の人が「いくら」を与えると、アレルギーを起こしてしまう可能性があります。
21「そばアレルギー」はそばの粉を吸い込むとアレルギーを起こしてきます。
22「魚アレルギー」はちょっとずつ魚を食べてみるとアレルギーを起こさなくなります。
ただし魚そのものに手で触れないことが大切です。
23卵アレルギーで卵を除去しているお子さんには、卵ボーロをちょっとだけ食べて、症状が出なければ少しずつ食べる量を増やしていけば良いのです。