元気な子供の育て方
最近のお子さんの病気の症状は、多様化し複雑化しています。
今までのお薬では対応出来ないケースもみられています。
このような時には、漢方薬が意外に効果を発揮することがあります。
漢方薬も最近のものは、以前のものに比べて飲みやすくなっています。
以下に当院でお子さんに効果が良かった漢方薬と病気についてお話します。
Gakkenのかみつき・ひっかきの本に先生の記事が公開されました
P17~P48に載っています。
小児のメンタル疾患と漢方治療
お子さんでもストレスを感じそれが原因で様々な症状を示してきます。
現代っ子はお母様やお父様の予想以上にデリケートになっています。
①夜泣き
赤ちゃんは昔から夜泣きをします。軽い夜泣き自体は問題はありませんが強い夜泣きはお母さんやお父さんの睡眠を悩ませます。夜泣きは赤ちゃんが本来気持ちがリラックスして寝ているはずの夜間に興奮や不安がおこってしまうためです。ですので、赤ちゃんが夜間気持ちが落ち着くようにすれば良いわけです。
1)甘麦大棗
このお薬は「甘草」「小麦」「大棗」という甘味のある構成生薬です。甘味のあるこれらの生薬は「安神作用」という精神安定作用があります。甘麦大棗という漢方薬は赤ちゃんが夜間に興奮している状況を気持ちを落ち着かせてリラックスさせて夜泣きを改善してくれます。小さいお子さんは甘いものが好物で甘いものを食べるとニコニコして気持ちが落ち着きます。
2)抑肝散
甘麦大棗を内服しても夜泣きのおさまらない時によく効く漢方です。甘麦大棗に比べますと、同じ夜泣きでもどちらかといいますととてもかんの強い赤ちゃんに向いています。構成生薬の「柴胡」はイライラした状態を落ち着かせる働きがあります。また元気のない状態の「気うつ」を改善させる働きもあります。柴胡は「胸胸苦満」という胸部のあたりのストレスによる様々な症状(例えばストレスで胸が痛いとか胸の違和感がする)を改善する作用ももちあわせていますのでよりメンタルな部分に働くことでしょう。
②多動症(落ち着きがない)
1)甘麦大棗
多動症のお子さんは落ち着きがないのが一つの特徴ですが本来ならば年令に一致した状況になっていないために起きてくる不安感が原因としてあります。この不安感を改善させるのに「安神作用」という精神安定作用が効いてくるのです。甘いお薬ですので味にデリケートなお子さんでも飲めるのが良い薬です。
2)抑肝散
甘麦大棗を内服しても効果がない多動症のお子さんには抑肝散が効果があります。構成生薬の「柴胡」はイライラした落ち着きのない症状を改善してくれます。神経過敏や多動症に効果があります。多動症のお子さんはイライラ感がみられますのでこれを改善するだけでもかなり症状が良くなります。
③チック
1)柴胡加竜骨牡蛎湯
「チック」というのは何らかの精神的ストレスを感じてその結果として「目の目立つまばたき」とか「体の部分を無意識に動かしている症状」のことです。チックのお子さんでも落ち着きのみられないこともあり、構成生薬の「柴胡」がイライラ感を静めてくれます。「柴胡」は胸胸苦満といった胸部におけるいやな感じがある「気うつ」の症状でも改善します。「竜骨」や「牡蛎」は精神不安定よる「あせり感」を改善する作用があります。構成生薬には大棗も含まれていますので「安神作用」という精神安定さようにも効果があります。チックのお子さんは落ち着きがないのに加えて「イライラ感」や「あせり感」などがおきてきます。これらをまとめて一つの漢方薬で改善出来るのが「柴胡加竜骨牡蛎湯」なのです。
2)抑肝散
構成生薬の「柴胡」が「イライラ感」を改善して気持ちを落ち着かせる作用がチックの症状を改善することがあります。多動症のチックがみられるお子さんに向いています。チックで眼のまぶたが「けいれん」するようになる症状にも効果があります。構成生薬に「当帰」と「センキュウ」が入っていますのでこれらがお腹の痛み(下腹部)にも効きますのでチックでお腹が痛いお子さんにも向いています。構成生薬の「センキュウ」や「釣藤鈎」は神経過敏な頭痛にも効きますのでチックで頭痛のあるお子さんにもむいています。
④気管支喘息(心因性)
1)神秘湯
気管支喘息のお子さんで精神的ストレスを感じると「喘息発作」として「咳」が出ることがあります。 この場合は通常の喘息のお薬に加えてストレスで元気がなくなっている状態を治してあげれば良いのでこのような時に効くのが「神秘湯」です。 「神秘湯」には「麻黄」と「杏仁」が入っていますのでこの2つが喘息発作で腫れている気管支の浮腫を改善します。 「神秘湯」に入っています「柴胡」と「厚朴」と「蘇葉」が「気うつ」になったメンタルの状態を改善してくれるのです。 この構成成分のおかげで心因性の喘息発作が改善されるわけです。
⑤過敏性腸症候群(IBS)
1)桂枝加シャク薬湯
過敏性腸症候群(IBS)のお子さんは「下痢」と「便秘」と「腹痛」を繰り返すことが多くみられます。 この中で最もお子さんが困るのは「腹痛」です。「腹痛」という痛みはストレスを増加させます。このような時に効くのが「桂枝加シャク薬湯」です。 「桂枝加シャク薬湯」の構成成分は「シャク薬」が最も多く含まれておりまして、この「シャク薬」がお子さんの腹痛を改善させてくれるのです。 「桂枝加シャク薬湯」の中には「桂枝」も含まれていますので「腹痛」や「下痢」で気分がイライラした状態にも効きます。 「桂枝加シャク薬湯」の中の「大棗」は「安心作用」といって精神安定作用のある甘い成分です。
⑥脱毛症
お子さんに様々なメンタルな負担がかかりますと皮ふに脱毛がみられるお子さんもいらっしゃいます。
1)甘麦大棗湯
脱毛症のお子さんはメンタルにデリケートな原因がありますので原因がわかればそれを取り除くことも大切ですがお子さんのストレスを軽減することも重要です。 このようなお子さんは精神的に不安定なことが多いので「甘麦大棗湯」に含まれる「大棗」のもつ「安神作用」で精神を安定して落ち着かせて不安を減らすことも大切です。
2)柴胡加竜骨牡蛎湯
構成成分である「竜骨」や「牡蛎」は「焦燥感」に効果があります。お子さんでメンタルストレスを感じますと「焦ってしまう」お子さんがいます。この状態を改善してくれるのが「竜骨」や「牡蛎」です。 また、構成成分である「桂皮」は「気逆」「気の上衝」といったストレスによる「気」の頭への偏在がおこるのを改善してくれるのです。 もちろん、「柴胡」が入っていますので「胸胸苦満」や「気うつ」にも十分効果があります。
小児の局所の感染症と漢方治療
①小児の肛門周囲膿瘍
赤ちゃんによく見られるのおしりの病気として「肛門周囲膿瘍」という皮膚の局所の細菌の感染症があります。
「肛門周囲膿瘍」は男の子に多くみられ、生后6ヶ月未満の赤ちゃんが大半を占めます。
肛門の周囲に黄色の膿みのたまった赤い膿瘍が肛門周囲の6AMか3PMの方向に腫れてみられます。
A)十全大補湯
「肛門周囲膿瘍」には「十全大補湯」という漢方薬がよく使われます。
「十全大補湯」は「四物湯」と「四君子湯」と桂枝と黄耆の生薬で構成されています。
「四物湯」は補血剤で「血虚」を改善します。血の巡りが良くなくて栄養がいかないで組織が痛んだ状態「血虚」を改善する作用があります。
例えば、指先や皮膚や爪などの末梢に多くみられる爪がわれたり指先がわれたり指先が乾燥したりする「血虚」の状態を改善します。
「肛門周囲膿瘍」は「血虚」で出来上がった病気ですので、四物湯がこれを改善する働きがあります。「四物湯」には「芍薬が入っていますので肛門周囲膿瘍の痛みでお腹がつっぱるのを軽減してくれます。
「四君子湯」は補気剤で「気虚」を改善するお薬です。また補脾剤で「脾虚」を改善するお薬でもあります。
「気虚」と「脾虚」は合併していることが多くあります。「気虚」がありますと食欲がない、食べられない、下痢をしやすい、食が細いなど脾の働きが良くない、消化管の消化吸収能力が良くないことになります。人間は食べることでその効果として体の様々な漢方的な症状が改善するようになっています。「脾虚」が改善されませんと「脾虚」以外の症状(血虚)も良くなりません。
十全補湯は、四君子湯で「気虚」と「脾虚」を同時に治すことで「血虚」の症状もより改善しやすくなっている漢方薬なのです。十全大補湯に入っている黄耆も皮膚を改善します。十全補湯は再発生を繰り返す肛門周囲膿瘍にも効きます。
使用目標は完全に膿瘍が消失するまでですのでかなり長期の内服でも大丈夫です。
B)排膿散及湯
「肛門周囲膿瘍」で発赤と膿みと腫れが特に著明な場合には「十全大補湯」よりも「排膿散及湯」の方が良く効く場合があります。
「排膿散及湯」という漢方薬は発赤があって膿みがたまった状態の膿みを排出させて症状を改善させる「桔梗」や「枳実」といった排膿作用のある生薬成分が入っています。ですので「肛門周囲膿瘍」だけではなく局所に膿みがたまって発赤のある状態でしたら「排膿散及湯」ほ良く効きます。例えば扁桃腺やにきびや蜂窩織炎にも効きます。
②ニキビ・ニキビ様皮フ炎
A)排膿散及湯
お子さんのなかなか治らない難治性のニキビやニキビ様皮膚炎に良く効きます。
使用の目安はニキビやニキビ様皮膚炎でみられる膿栓(膿みのかたまりが丸く集まったもの)が多く多発していて皮膚に赤みがあれば排膿散及湯を使用しますとよいでしょう。
「排膿散及湯」は皮膚にたまった膿みを外側に排出させる排膿作用をもつ生薬成分であります。「桔梗」や「枳実」を含んでおりますので良く効きます。もちろんミノマイシン(抗生剤)の併用をしますと更に早く改善がみられます。
使用目標はニキビやニキビ様皮膚炎が完全に消失するまでですので数ヶ月の長期内服が必要になることも十分あります。
③副鼻腔炎(蓄膿症)
A)「荊芥連ギョウ湯」
難治性の副鼻腔炎には、「荊芥連ギョウ湯」がとても良く効きます。通常の副鼻腔炎の治療をしても全く治らないお子さんに良く効きます。
「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「四物湯」は血虚を治す補血剤で血液のめぐりを良くして痛んだ状態の副鼻腔や鼻の中の組織を修復して改善させます。
「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「黄連解毒湯」は副鼻腔や鼻の中の炎症の熱をさます作用があります。
「荊芥連ギョウ湯」の構成生薬の「桔梗」や「枳実」は排膿させる作用をもっています。これらが組み合わさって排膿、清熱、修復を行うわけです。
使用目標は症状が消失するまでですので1~3ヶ月位かかるお子さんもいます。
④扁桃炎
A)小紫胡湯加桔梗石膏
喉が痛い扁桃炎に良く効きます。構成生薬は小紫胡湯に次の2つの生薬が加わったものです。
真っ赤にのどが炎症をおこしているのを冷やす作用のある「石膏」と扁桃の膿みを排出させる排膿作用のある「桔梗」が加わったのが小紫胡湯加桔梗石膏という漢方薬です。喉が真っ赤で扁桃炎に膿が付いている状態のお子さんに良く効きます。
使用目標は大体1週間です。
B)排膿散及湯
喉の痛みよりも扁桃腺に膿栓(膿みのかたまり)が多数みられる扁桃炎のお子さんに良く効く漢方薬です。
構成生薬の「桔梗」と「枳実」に排膿作用がありますので膿みがたまった扁桃炎に良く効きます。
使用目標は大体1週間です。
⑤蜂窩識炎
A)白虎加人参湯
お子さんの皮膚の局所に細菌感染が起きて、その炎症が広範囲に皮膚の深い所まで見られてくるのが蜂窩識炎ですが、発赤、熱感、腫張、圧痛が強いのが特徴です。
構成生薬の「石膏」が強烈に冷やす作用のあるお薬ですので、蜂窩識炎の強い発赤と熱感を冷まして改善してくれます。通常は1週間くらいの内服で十分です。 抗生剤と併用するのが良いでしょう。
⑥面庁
A)排膿散及湯
お子さんの皮膚の局所に強い細菌感染を起こしてその炎症が強く皮膚が真っ赤になって熱感と腫張が激しい場合に「排膿散及湯」が良く効きます。特に顔面に出来たお子さんの「面庁」には良く効きます。
使用目標は赤みが完全にとれるまで少し長目に2~4週間使用しても良いでしょう。
小児の肛門周囲膿瘍と漢方治療
肛門周囲膿瘍は主に赤ちゃんのおしりの周囲に出来るオデキですが、次の漢方薬が効果があります。
1) 排膿散及湯
肛門周囲膿瘍が真っ赤に腫れて膿をもっている急性期の時に良く効くお薬です。 このお薬は桔梗や桔実といった成分が入っていまして、これがたまった膿を排泄するのです。 使用のコツは真っ赤に腫れていることです。内服は真っ赤な腫れがとれるまで継続します。 排膿散及湯は膿を排泄するのがこのお薬の特徴なので、扁桃炎の時にのどに膿がたまっている時にも効果があります。 またこのお薬には甘草という甘みの成分も入っていますので、扁桃炎ののどの痛みを緩和させてくれます。
2) 十全大補湯
肛門周囲膿瘍が真っ赤になる急性期を過ぎまして、腫れが残っている時に良く効くお薬です。 このお薬は気虚と血虚に使うものですが肛門周囲膿瘍では気虚による皮膚や粘膜のバリア機能の低下を改善し、血虚による慢性化膿性炎症を 改善する効果が期待できます。 このお薬は肛門周囲膿瘍の腫れが完全に触れなくなるまで内服が必要です。 再発性肛門周囲膿瘍を治すコツにもなります。
小児の熱中症と漢方薬治療
白虎加人参湯は石膏と知母が入っている最強の冷やす効果のある生薬ですので、皮ふ以外には、熱中症を起こした時にも使えます。
熱中症で、体が熱くなっている状態を白虎加人参湯の石膏と知母が冷やし、人参、米更米、甘草が脱水補正に働きます。一番いいのは熱中症を起こしたお子さんでは、点滴と併用して白虎加人参湯を飲むと症状が早く改善します。
出先で熱中症を起こしたら、すぐに白虎加人参湯をスポーツ飲料か水で内服するだけでも応急処置にはなります。
小児の難治性のじんま疹と漢方薬治療
白虎加人参湯は多形滲出性紅斑(以下EEMとします)に効きますが難治性のじんま疹にも効くことがあります。
難治性のじんま疹では、EEMとは異なった紅斑様の発疹が多発して、消えては出るを繰り返しますが、通常の西洋薬が効果がみとめられない時に効果があるのが白虎加人参湯です。
この時もEEMの時と同じで発疹が完全に消えるまで内服が必要です。
小児の多形滲出性紅斑と漢方薬治療
小児の難治性皮膚疾患の中に多形滲出性紅斑(以下EEMとします)があります。
EEMは意外と治療に難渋する皮膚疾患ですが赤みのある急性期では「ツムラ白虎加人参湯」がとても良く効きます。
EEMは急性期は浮腫状の紅斑が大小不同に見られて、一部は中心部の色が抜けた状態のドーナツ様の紅斑を呈します。この時のEEMは見た感じは真赤に腫れていまして、触ってみますと熱感を感じます。
このEEMの赤い腫れと熱感をとるのに白虎加人参湯に含まれる石膏が大いに役立つのです。
石膏は冷やす効果のある生薬です。
石膏は白虎加人参湯以外のツムラの漢方薬にも含まれる生薬ですが白虎加人参湯の石膏の含有量はその中で最も多い15gが入っています。
石膏と知母が入っている白虎加人参湯は力強く冷やす最強のコンビです。
また、米更米も入っていますので、甘い味がしてお子さんでも飲みやすいのが白虎加人参湯の良いところです。
EEMに白虎加人参湯を内服しますと速効性がある漢方薬ですので、EEMの紅斑が早ければ1週間くらいで消えてきます。
初めは完全にEEMの紅斑が消えるまで白虎加人参湯を内服する必要があります。
内服してから紅斑が減ったけれどもまだ残る時には、そのままの量で内服を長くする方法と内服量を増量して継続する方法があります。初めの治療で紅斑の減り方が少ないお子さんでは早めに増量するのが良いでしょう。
EEM発症からの期間が長いお子さんでは、白虎加人参湯を短期間ではなく1週以上の長期単位で治療を継続することが必要です。
小児のぜん息と漢方薬治療
ぜん息の症状に応じて次の様にそれぞれ漢方薬の使い方が異なります。
①麻杏甘石湯
お子さんのぜん息の発作が急性期で症状が重い時(咳がひどくて眠れない、咳とともに吐いてしまう、咳き込みがひどいetc)には、麻杏甘石湯を服用しますと発作が急速に改善されます。
ぜん息の急性期では肺の気管支が腫れてむくんだ状態になっています。麻杏甘石湯に含まれる「麻黄」と「石膏」の組み合わせが、むくんだ気管支の水分を体の内側に移動して尿に出して、むくみをとる作用をもっています。
また、同じく含まれる「麻黄」「杏仁」の組み合わせは腫脹した気管支の腫れをとる作用を持っています。
すなわち、「麻黄」と「石膏」と「杏仁」の成分が発作が重い時のぜん息の気管支の状態を急速に改善してくれるのです。ステロイドの内服に近い効果と言えます。
ポイントは、ステロイドの内服と同様に「短期に使用」して中止するのが良いでしょう。
点滴からステロイドと水分を十分に補充した後に、麻杏甘石湯を開始する治療も有効です。内服で麻杏甘石湯とステロイドを併用しても有効です。
②神秘湯
「麻黄」と「杏仁」が含まれていますのでぜん息の発作で腫脹した気管支の腫れをとる作用をもつ薬です。
「柴胡」が入っていますので、胸のあたりに何らかの症状(胸が痛い、胸が苦しい)である「胸々苦満」と言ったお子さんの自覚症状を改善する作用ももっています。
さらに、「厚朴」「陳皮」「蘇葉」といった成分は、元気がない症状を改善します。「柴胡」にも同じように元気を出す効果があります。
ぜん息の発作が少しおちつかないお子さんで、発作を起こすと精神的に元気がなくなるようなお子さんにとても向いているお薬と言えます。この意味では、心因性咳嗽にも効果が期待できます。
長期に使用しても、短期使用でもどちらにも使えるお子さんのぜん息のお薬です。
③麦門冬湯
咳き込んでしまうような発作性の咳が良く出るお子さんに良いお薬です。お子さんのぜん息で特に乾いた(咳のからまない)咳に良く効きます。
咳き込んでしまう咳とともに嘔吐する状態は、ぜん息の中でも「気のめぐり」が頭にのぼりすぎている「気逆」というものです。 この中に含まれる「麦門湯」「人参」「米更米」「甘草」「大棗」は、気を静めるお薬です。気が静まることで発作性の咳が良くなります。お子さんには、「気逆」のぜん息の方が意外に多くみられて、このお薬が良く効きます。 「半夏」は胸に水がたまった状態をかわかす作用のあるお薬で「吐き気」「嘔吐」「咳」「痰」に効きます。 「半夏」は乾かす作用をもっていますので「のどの渇き」がない時に使えます。舌を見て、乾燥していたら使わないようにしましょう。
麦門冬湯は、継続的に内服しても大丈夫なお子さんのぜん息のとても便利なお薬です。
④清肺湯
ぜん息のお子さんが、気管支炎や肺炎にかかった後に病状が良くなってきたのに、痰のからむ咳がどうしても残ってしまって良くならない時に治すのが「清肺湯」です。痰が多い咳に内服しますと、痰がとれてスッキリ治ります。肺を清めるお薬です。1~2週間の内服で十分です。
⑤竹じょ温胆湯
咳が出ていて、イライラしていて安眠の出来ない咳に効果があります。
⑥半夏厚朴湯
ぜん息のお子さんが、咳ほどではないけれども「ウッ」「ウウ」と咳ばらいをしたり、喉がつかえる感じがしたりとか、喉から前胸部の中心にかけてへんな感じがしたりするとか違和感がすると訴えることがあります。
お母様はぜん息発作と思ってクリニックに来院されるのですが、お子さんにどこが調子が良くないとお聞きしますと、前述のようなお答えがかえってきます。
このような時は、ぜん息発作というよりも何かのストレスをうけて気持ちが元気がなくなるような状態「気うつ」でおこっている症状ですので、半夏厚朴湯がとてもよく効きます。
半夏厚朴湯の中には紫蘇葉、厚朴といった「気うつ」に効く成分が入っています。また生姜も入っていまして気分を発散させて「気うつ」を改善させます。
半夏は胸に水がたまる状態の時にそれを乾かす作用がありますので悪心や嘔吐や痰にも効果があります。喉がつかえて悪心があり咳や痰があるといったお子さんに効きます。
半夏は乾かす作用のある成分ですのでのどのかわきがない時に使えるお薬です。
茯苓はめまいや動機を治す効果がありますので、喉がつかえて「気うつ」があってさらにめまいや動悸があるお子さんにも効きます。
ぜん息のお子さんは意外にデリケートな方が多くいますので「気うつ」でぜん息に近い症状が出るものと考えられます。
小児の急性発熱感染症と漢方薬治療
急激に発熱を示してくるのが小児の感染症の特徴ですが、
この時にとても役立つ漢方薬があります。
①麻黄湯
麻黄湯と言いますと「インフルエンザ」を思いおこす方が多いかと思いますが、「インフルエンザ」以外でも効果を発揮します。
麻黄湯は杏仁、桂皮。麻黄、甘草の4つの生薬成分から成り立っています。
この中の、「麻黄」と「桂皮」は体の中から外にむかって「水分」を移動させて体の表の水を排除する生薬で発汗を促す作用があります。
発熱でぐったりしている時に汗をかかせて熱を下げる作用をもっているのです。1日3回の処方でも初回は2回分と多めにのむと早く熱が下がります。
この時の使用のポイントは「寒気」(悪寒)が必ずあることです。
発熱があっても「寒気」(悪寒)がない時は使えません。
発熱していて体の表面に「寒気」(悪寒)があるというのは「表寒」の状態で、これを改善するのが「麻黄湯」です。さらにこの時2つ目の使用のポイントは脈がしっかりと触れること「浮脈といいます」も必要です。逆に発熱があっても脈が弱く触れるかほとんど触れない場合は「沈脈」といいまして体の裏側(内側)が冷えていることが多い「裏寒」の状態なのでこの場合麻黄湯は使えません。
「麻黄湯」の成分の「杏仁」は腫脹したものの腫れをとる作用がありますので発熱に伴う関節痛や頭痛に効果があります。
「麻黄湯」の成分の甘草は脱水の補正をになっています。
②麻黄附子細辛湯
「裏寒」の時には裏側だけではなく表も冷えていることが多くあります。
「裏寒」のタイプの患者さんは感染しても発熱しないことが多いので注意が必要です。お子さんや老人や若い人に見られることがあり、その時は「麻黄附子細辛湯」を使いますと良くなります。「寒気」(悪寒)があって脈が弱く触れるかほとんど触れない「沈脈」が処方の良い使用目標になります。
③葛根湯
麻黄湯と同様に麻黄と桂皮入っていますので発熱がありぐったりしている時に汗をかかせて熱を下げる効果は似ています。
麻黄湯との違いは
1)葛根が入っているので「うなじの凝り」を改善させる作用があります。
2)芍薬が入っているので鎮痛、鎮けい作用があります。頭痛や筋肉痛、関節痛、腹痛にも効果があります。
3)生姜、大棗、甘草が入っているので胃薬の効果がありますので麻黄湯で胃の調子が良くなくなる方には葛根湯の方がより良いでしょう。
4)麻黄湯の方が構成生薬の数が少ないので重い発熱には葛根湯よりも「切れ味」が良いと考えられます。
急激な発熱のお子さんに漢方薬は効果がありますが次の点に注意が必要です。
急速な発熱疾患には、インフルエンザが典型例ですが、インフルエンザには溶連菌感染症が合併することがかなり多くみられます。
溶連菌感染症の主な症状は発熱、頭痛、喉の痛みや全身の倦怠感や関節痛と様々でインフルエンザに似ていますが典型的なものでは写真にみられますような「発疹」と「イチゴ状舌」が見られます。
「発疹」は細かい赤いものが多く主に「体」にみられますが「手」や「足」にみられることもあります。
「イチゴ状舌」は文字通りイチゴの表面の皮のように舌がブツブツと赤くなるものでどちらも溶連菌に特徴的なものです。
「発疹」や「イチゴ状舌」が見られない溶連菌感染症もありますのでインフルエンザの症状を訴えるお子さんはインフルエンザの検査と一緒に溶連菌の検査して確認するのが良いでしょう。
インフルエンザに溶連菌を併発している場合は漢方薬だけではなく抗生剤の内服が必ず必要になるからです。
小児の冷えと漢方薬治療
冬とは限らずに、お子さんでも「冷え」の症状が年中あり様々な症状を示してくることがあります。
その原因としては、体中の血液の分布に部分的な片寄りがおこっていることがあります。
1)桂枝茯苓丸
体が何となく調子が良くないというお子さんは意外と体の血液の分布が均等になっていないことがあります。
血液が部分的に「充血」している状態を「癒血(おけつ)」と言います。(「癒血」は部分的に血液が体の中で片寄っていることです。)
「癒血」の自覚症状としては主にお腹と下肢のものが多くみられます。
何となくお腹が痛い、お腹の調子が良くない、便秘をする、足が腫れぼったい、足が痛い、足が冷たい、夕方になると足の調子が良くないなどです。
「癒血」がありますとお子さんに舌をひっくり返してごらんと言いますと「舌下静脈の怒張」が見られます。
健康なお子さんですと舌の裏側の舌下静脈はほとんど見られず、そして太く怒張して見えることもありません。
この舌下静脈の怒張が「癒血」の簡単な見分け方です。
「癒血」のお子さんは首から上の方は温かくて手足を触ると冷たいという「上熱下寒型」の「冷え症」の状態をしめしていますので、首や手や足を触れると良くわかります。
ですので頭の方は暑く感じたり、、ややイライラしたり頭痛がしたり頭がカッカとします。対照的に手足は冷たいのでその冷えの状態が出てきます。
大きなお子さんや成人の女性には下肢の静脈瘤もみられますがこれも「癒血」の代表的なサインです。
桂枝茯苓丸には、「桂皮」が入っていますので体の表面を温めながらお腹の中を温める作用があります。
また「のぼせ」(気逆)にも効果があります。「のぼせ」とは「イライラ」する、「頭がカッカ」する「興奮しやすい」などの症状を示しています。
「癒血」のお子さんはお腹を触ると冷たいことがよくあります。手足以外にお腹も冷えているのです。
また、「牡丹皮」と「桃仁」が入っていますのでお臍の下腹の痛み(不快感)(少腹痛)をとる作用もあります。
「癒血」のあるお子さんはお腹を優しくソフトに触れますとお臍の下側の左右を押した時にかなり痛がります。お子さんが腹痛を訴えていなくてもお腹をさわって押してみるとこの症状がよくわかります。
このように痛がる症状を「臍傍圧痛」といいまして痛がる場所を「癒血点」といいます。
ポイントは直接お腹を優しくさわってみると初めてわかることです。
この下っ腹の痛みを改善するのが「牡丹皮」と「桃仁」なのです。「茯苓」も入っていますので「気逆」でのぼせて「動悸」や「めまい」が伴なったお子さんにも効果があります。
「芍薬」は「牡丹皮」や「桃仁」と同じでお腹の痛みをとる成分です。
「癒血」のお子さんはもう一つお腹の特徴があります。それは心窩(みぞおち)からお臍の上あたりまでをゆっくり触りますと腹部の大動脈の拍動をはっきりと触れることです。
拍動が触れた時にお子さんに「触っているお腹のところがドキドキしているのがわかりますか」とたずねるとお子さんは「ハイ」としっかりわかり答えてくれます。これを「臍傍動悸」といいます。
「桂皮」が効くのはこのお腹の動悸にもあるかもしれません。
2)当帰芍薬散
お子さんで爪が割れやすいとか指先の皮膚がカサカサして乾燥している時などは「血虚」のサインです。
「血虚」は「癒血」とは違って本来手や足の先端といった末梢の部分の血液が不足していておこる状態です。これは「末梢循環不全型」の冷え症です。
「血虚」を治すお薬が補血剤で成分にも入っている「当帰」「川弓」「芍薬」が効果を発揮します。
「血虚」のお子さんは末梢の血流不足のために爪がわれたり、手の指先や足の指先がカサカサ乾燥してきますが、お腹の中にも「血虚」「血流不足」が見られますので、お腹の痛みの症状(少腹痛)も出てきます。
「当帰」は皮膚の状態も改善して「小腹痛」にも効きますのでお肌の状態がよくなくて冷えでお腹が痛いお子さんに効きます。
「川弓」は頭痛にも効きますし、「小腹痛」にも効きますので頭が痛くて冷えでお腹が痛いお子さんに効きます。
ここでいう「少腹痛」というのは、例えば不正出血をした時や、月経痛で起きる腹痛、血流不足で起きるお腹の痛みを示しています。
「血虚」も冷えの原因となります。
例えばお子さんの「しもやけ」も「末梢循環不全型」冷えの症状になります。
成分に含まれています「茯苓」「蒼朮」「沢瀉」は乳水剤ですので乾燥したお肌に水分も潤してくれます。
3)当期四逆加呉しゅゆ生姜湯
お子さんで「しもやけ」や「手足の冷え」の症状が強い場合に効果があります。
呉茱や細辛が入っていますので体をより温めて末梢の血流を良くします。
小さなお子さんには少し飲みにくい漢方薬です。
「末梢循環不全型」の冷え症に効きます。
小児の血管性紫斑病と漢方治療
主に下肢に紫斑と呼ばれる赤い出血斑がみられます。
紫斑は指でおしても消えないのが特徴です。
小児の難治性血液疾患に血管性紫斑病があります。
小児の血管性紫斑病は通常は入院して治療をすれば治る病気ですが、その中には紫斑病の再発を繰り返すお子さんや紫斑病性腎炎といいまして紫斑病に腎炎を合併して血尿や蛋白尿が出たりするお子さんがいらっしゃいます。
このようなお子さんに「柴苓湯」という漢方薬治療がとても良く効くことがあります。
柴苓湯は「小柴胡湯」と「五苓散」を合わせたものです。
柴苓湯の成分の「小柴胡湯」に含まれています「柴胡剤」は裏側の熱を冷やして炎症やアレルギーを抑える働きがあります。
紫斑病には炎症やアレルギーの関与が考えられておりまして、この症状に対しては「柴胡剤」が効くわけです。
また柴苓湯の成分の「五苓散」は水の偏在である「水毒」を改善させる成分が入っていますので紫斑病でみられます下肢の関節の腫れやむくみや腹痛に効くわけです。
さらに、「五苓散」の中の「朮」(じゅつ)という成分は四肢の痛みにも効きますので、紫斑病にみられます「関節痛」にも効いてくるのです。
「水毒」を改善させる効果は紫斑病の合併である紫斑病性腎炎にも効果が出てくるのです。
ここで大切なことは生薬の組み合わせです。
「小柴胡湯」単体でも効果は不十分ですし、「五苓散」単体でも効果は不十分ですし、この2つの組み合わせである「柴苓湯」が紫斑病に最も効くのです。
漢方薬のとても良いところは一つの漢方薬でたくさんの症状に対して効果がみられるということが特徴ですので「柴苓湯」はその代表といえるでしょう。
小児の下痢と漢方治療
①小児の下痢ではいくつかのポイントがあります。
1)口渇(のどのかわき)があるかどうか。
2)吐き気があるかどうか。
3)冷えがあるかどうか。
4)下痢に出血を伴なっているかどうか。
5)重症の下痢かどうか。
6)舌が渇いているかどうか。
上記の点に配慮しながら次のような漢方薬を選択していきます。
②五苓散(ゴレイサン)
1)下痢をしている時はお子さんのお腹の中の水回りが乱れています。
下痢は体の中の水分が腸に集まってきてそれが外に出てきたもので、これを「水毒」といいます。 「水毒」がみられていて、お子さんに口渇(のどのかわき)がみられている時に効くのが「利水剤」である五苓散です。
五苓散は「茯苓」と「蒼朮」と「沢瀉」と「猪苓」という主に水まわりを改善する生薬成分が含まれています。 「茯苓」は目眩(めまい)や動悸(どうき)に効きます。
「蒼朮」は四肢の痛みや胃がポチャポチャという「胃内停水」に効きます。
「沢瀉」は目眩(めまい)や頭がしめつけられるような帽子を頭にかぶったような感じの「頭帽感」に効きます。
「猪苓」は熱を繰り返す下痢に効きます。
これらの成分があわさって「水の捌き方」に効を奏するのです。
五苓散の使用の1つ目のポイントは口渇(のどのかわき)がある下痢です。口渇(のどのかわき)があるということは「利水剤」の五苓散を使用できる指標です。
2つ目のポイントは舌が渇いていない「水毒」の特徴があるということです。もし、舌が渇いている時には「脱水症」ですので「利水剤」の五苓散は点滴などの脱水症の治療と併用して行わなければなりません。
2)五苓散の注腸療法
お子さんが下痢や嘔吐や悪心の症状が強い時には「五苓散」をお湯に溶かしてチューブでお尻の穴から注腸をする方法がとても有効です。
注腸療法は、
A)症状の改善が早いことです。注腸してから15分程度で症状の改善がみられます。
B)嘔吐の回数が多かったり、悪心や腹痛の訴えが強いお子さんでは、注腸療法により嘔吐が止まったり、悪心もなくなり腹痛も消失します。
C)顔色不良なお子さんや元気がないお子さんでは注腸療法後に著明に症状が改善して元気になります。
D)「五苓散」の内服が苦手なお子さんでも行なえる治療法です。
E)腸雑音の亢進が著明な嘔吐や下痢のお子さんでは注腸療法をしますと腸雑音の亢進が短時間で消失して症状も改善します。
③猪苓湯
口渇(のどのかわき)があって、悪心がなくて、下痢の症状が重い時に効きます。「猪苓湯」の生薬成分には「猪苓」「沢瀉」「茯苓」という「五苓散」にも含まれている「利水剤」が入っていますので、「水毒」の下痢に効きます。
また、生薬成分の「阿膠」は止血剤の作用がありますので、出血を伴なう下痢や感染症胃腸炎(食中毒)のひどい下痢に良く効きます。
さらに、「阿膠」はその止血作用から「出血性膀胱炎」にも効きます。
さらに、生薬成分の「滑石」は強力な静熱剤ですので熱を繰り返す下痢にも良く効きます。 使用のポイントはお子さんの口渇(のどのかわき)があって悪心がなくて舌が乾いていない「水毒」の所見があり、さらに血便や血尿を伴なう下痢に使用しますと良いということです。 五苓散に似た「水毒」ですがさらにより重い下痢に使用するとよいかと思います。出血していなくても水様性の下痢がひどければ良く効きます。
④半夏瀉心湯
口渇(のどのかわき)がみられていない、悪心のある下痢に効きます。
生薬成分の「半夏」は胸に水がたまる状態(吐気、嘔吐)を乾わかして症状を改善させる作用があります。 半夏の入っているお薬はこのような乾かす作用がありますので、口渇(のどのかわき)がみられていなくて、舌が乾いていない時に使える漢方薬です。 生薬成分の「黄連」、「黄ゴン」は下痢とみぞおちの不快感を改善します。
「人参」も同様にみぞおちの不快感を改善します。
五苓散や猪苓湯と異なるのは口渇(のどのかわき)がみられない悪心のある下痢に使いますと良く効くという点です。
⑤真武湯
寝冷えのような冷えでおきた下痢に良くき効きます。
例えば冷たいもの飲んで下痢をした時とかクーラーをつけっぱなしで手足が冷えて下痢になった時などが寝冷えの下痢となります。 「冷え」が原因ですのであたためて治すことが良いことになります。
生薬成分の「附子」は体の内側を温める作用があります。
「附子」は強く体を熱して温めて冷えているのを温める作用があります。
「附子」は四肢(手足)を温めます。 「附子」が入っている漢方薬を使える時の目安は脈が弱く触れる「沈脈」という状態の時です。逆に脈がしっかりと強く触れる「浮脈」の時には「附子」が入っている漢方薬は使えませんので注意が必要です。
石川院長監修 『子どもの心とからだ 漢方で すこやか元気に』
『子どもの心とからだ 漢方で すこやか元気に』
石川院長監修のお子様とお母様向けの小児漢方薬の
冊子が出来ました。
監 修 :石川功治(たんぽぽこどもクリニック院長)
イラスト:沢田真理(絵本イラストレーター 日本児童出版美術家連盟会員)
全国のクリニック・病院へ配布されております。(一部医療機関を除く)
アトピー性皮膚炎
昔は少なかった病気ですが今や現代っ子の皮膚病の最もポピュラーなものです。
重症のアトピー性皮膚炎が増えた事が目立ちます。また、以前は冬場に悪化するものが多かったのですが、最近は花粉症の時期に花粉の接触で顔だけ悪化するアトピー性皮膚炎も増えてきました。
難治例では漢方薬の併用が有効の場合があります。
アトピー性皮膚炎で赤ちゃんの時に発症して、その後、アレルギー性鼻炎や気管支喘息になる例が増えています。
30年前のお子さんと今のお子さんは全く別人です。
その典型例が、小児科におけるお子さんの病気や症状と言えるでしょう。
昔のお子さんになくて現代っ子にある病気や症状はたくさんあります。
アレルギー性鼻炎
近年著明に、小さなお子さんの花粉症が増えています。
早いお子さんですと生後3~6ヶ月からそのサインがみられます。
鼻水、くしゃみ、鼻閉、眼のかゆみが主な症状ですが、0才児では、鼻の中の面積が本来狭いため、鼻水が出るとすぐ鼻閉に移行することがみられます。
難治例では、漢方薬の併用が有効の場合があります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性鼻炎のお子さんで目がかゆくなったり、涙目になったり、目が充血したりすることが主な症状です。最近のアレルギー性鼻炎ではアレルギー性結膜炎の目のかゆみの症状を訴えるお子さんが増えています。
難治例では、漢方薬の併用が有効の場合があります。
気管支喘息
最近増えている気管支喘息は、ゼイゼイ、ヒューヒューというお子さんよりも朝方咳がひどい、夜間咳がひどい、咳がひどいと咳き込む、咳とともに嘔吐する、咳がひどくて眠れないなどの症状が多くみられます。また、走ると咳が出る、大きな声を出すと咳が出る、朝晩の気温差があると咳がでるといった症状も気管支喘息のサインです。
これらがありますと日常生活の質が低下してしまいますので、症状があれば早目に治療し、日常生活を改善することが大切です。
難治例では、漢方薬の併用が有効の場合があります。
食物アレルギー
典型的な症状では、皮膚の症状があります。特定の食べ物を食べ、5~10分くらいで顔のまぶたが腫れてきたり、顔が全体的にむくんできたら食物アレルギーの可能性があると考えられます。
アトピー性皮膚炎のお子さんは食物アレルギーが多いのではと心配されるお母様方が多いのですが、アトピー性皮膚炎がありましても皮膚の状態が良ければ食物アレルギーになるリスクはかなり下がります。食物アレルギー発症予防のためにも、アトピー性皮膚炎の外用治療は大切です。
例えば、卵をまだ食べていないアトピー性皮膚炎の赤ちゃんがアレルギー検査で卵の反応が陽性だとした場合、これは真の卵アレルギーでなく、アトピー性皮膚炎の皮膚状態が良くないために皮膚に卵がふれて体内に侵入したためにおこった経皮感作という状態で、偽りの卵アレルギーといえるでしょう。アトピー性皮膚炎の皮膚状態が良くなれば卵は食べても大丈夫ということになります。