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冊子写真(よくわかる食物アレルギー)
よくわかる食物アレルギー
  内容はこちらからどうぞ。

 神奈川県立こども医療センター栗原先生著書

「食物アレルギーの最新の対応」
「食物アレルギーの最新の対応」
国立病院機構相模原病院
臨床研究センター アレルギー性疾患研究部長
海老澤元宏先生 講演会

@口腔アレルギー症候群(果物アレルギー)は、口腔粘膜由来のアレルギーです。

A食物アレルギーは小腸経由のアレルギーです。

B平成16年〜平成25年で 食物アレルギーは2倍に、アナフィラキシーは4倍に増えました。

C卵、ミルク、小麦が食物アレルギーの3大アレルゲンです。

D成人になっておきる小麦アレルギーは運動誘発性のものが多いですが、小児におこる小麦アレルギーは運動誘発性のものはありません。

E食物アレルギーでは、連続する咳や喘息の呼吸器症状は「アナフィラキシーショック」の前兆として重要です。「アナフィラキシーショック」の症状の第1位が皮膚症状で第2位が呼吸器症状です。

F離乳食を始めるのが生後6ヶ月未満で食物アレルギーのIgE抗体ができている児は皮膚の湿疹(アトピー性皮膚炎)が良くない状況のことが多いです。

G食物のIgE抗体が陽性でも必ずしも食物アレルギーが出るわけではありません。

H小麦アレルギーのIgE抗体が陽性の児は食物経口負荷試験をして症状がでる児とでない児がありますが、ω-グリアジンIgE抗体が陽性なら小麦アレルギーと診断して良いことになります。

IピーナッツアレルギーのIgE抗体が陽性の児で食物経口負荷試験をして症状のでる児とでない児がありますが、Arah2IgE抗体が陽性ならピーナッツアレルギーと診断して良いことになります。

J食物経口負荷試験は病院でするもので、クリニックでできるものではありません。

K子供の食物アレルギーは3才までに1/2は治っていきます。

L牛乳アレルギーのお子さんが「歯科治療リカルデント」でアナフィラキシーを起こしています。

M0才児の時に食物アレルギーのお子さんを専門の病院の先生に紹介することが必要です。

N経口免疫治療(OIT)
A)食物アレルギーのお子さんに、食物アレルギーの原因食物を少量継続でいえると意外にうまく治療ができます。(無理して増量しなくても良いでしょう)
B)微量負荷試験
食物アレルギーの原因食物の微量を少しずつ食べてとっていた方が食べられる量が増えたり、微量継続ができて、完全除去にならなくてすみます。
C)食べ始めは、一過性にIgE抗体が上昇しますが、その後は下がってきます。

O食物アレルギーの感作は乳児期におこります。

P口の周りだけ赤くなるのは、判定保留として、他の症状が出なければ食物の摂取をとりつづけてもらうと、口の周りが赤くならなくなっていくようになりますので、負荷試験は必要ありません。

Qプリックテスト
生後6ヶ月以内の乳児は血液のIgE抗体検査とプリックテストを併用するのが良いでしょう。

食物アレルギーの最近の活題
食物アレルギーの最近の活題
〜経皮感作と食物アレルギーを中心に〜
島根大学皮膚科 千貫裕子先生講演会

@茶のしずく石けんによる小麦アレルギーは女性が95.9%を占めています。

A1)食物を食べただけでは症状は出ませんが食物を食べた後に運動をした時に初めて症状が出るのが「食物運動誘発性アナフィラキシー」です。
2)「食物運動誘発性アナフィラキシー」は60%が「小麦」によるものです。 小麦による「食物運動誘発性アナフィラキシー」は小麦アレルギーを示す「小麦」や「グルテン」のIgE抗体は約30%しか陽性率がありません。 ところが小麦による「食物運動誘発性アナフィラキシー」は小麦アレルギーを示す「ω-5グリアジン」のIgE抗体では79.6%と高い陽性率を示し、「高分子グルテン」のIgE抗体の」陽性率は18.5%を示しています。 ちなみに、20才以上の「食物運動誘発性アナフィラキシー」の「ω-5グリアジン」の陽性率は「94.5%」と特に高い傾向を示しています。

B1)茶のしずく石けんによる加水分解型小麦アレルギーの主な症状は「眼瞼部位」の腫れと発赤ですが通常型小麦アレルギーは「全身の膨疹(蕁麻疹)」と皮膚症状の発症部位が大きく異なります。
2)通常型小麦アレルギーではIgE抗体は下がってくることはありませんが、茶のしずく石けんによる加水分解型小麦アレルギーでは茶のしずく石けんの使用を中止しますと、IgE抗体は下がってくる特徴があります。

C皮膚の改善が食物アレルギーの改善につながります。 皮膚からの感作が終わって食物アレルギーを起こす前にまず皮膚炎を治すことが大切です。例えば赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の顔の発疹にvery strong class のステロイドの外用薬を使用しても問題はありません。

D花粉・食物アレルギー症候群
1)大豆アレルギーは「大豆」を食べておこる「けい口感作」の食物アレルギーと「豆乳」を吸入しておこる「吸入感作」による食物アレルギーがあります。
2)豆乳アレルギーの患者さんの花粉症の合併率は100%陽性です。特にハンノキ特異的IgE抗体(ハンノキ花粉症のアレルギーを示す抗体)の陽性率は100%です。

Eラテックスフルーツ症候群
ラテックスのゴムを使用した後に果物を食べると症状が出る食物アレルギーです。

F牛肉アレルギー
1)「牛肉の蛋白質」と「カレイ魚卵蛋白質」は交差反応がありますので、牛肉アレルギーの人はカレイアレルギーにも注意が必要です。つまり、牛肉アレルギーの患者さんは「カレイ」と「カレイの魚卵」は食べない方が良いことになります。
2)牛肉アレルギーの症状は「蕁麻疹」や「アナフィラキシーショック」です。
3)B型の血液型の人は牛肉アレルギーを起こしにくい特徴があります。
4)牛肉アレルギーの人はペット(犬)を飼っていることが多い特徴があります。これは、ペットについている「マダニ」にかまれて皮膚感作から牛肉アレルギーを起こしてくるのです。牛肉アレルギーは食べてからアレルギーの症状が出るまでかなり時間がかかるので牛肉を食べた直後とは限らないので注意が必要です。牛肉アレルギーは「マダニ」にかまれておきてくるのです。
5)セツキシマブ(抗がん剤)投与でもアナフィラキシーを起こすことがあります。
 新しいアレルギーマーチの概念における食物アレルギー
新しいアレルギーマーチの概念における食物アレルギー
神奈川県立こども医療センター 栗原和幸先生講演会

@抗アレルギー剤のエバステルやシングレアを内服しながら経口免疫療法をした方が治療中の副反応が出にくい傾向にあります。

A偏よらず幅広く食べることで食物アレルギーを抑制出来ます。

Bイスラエルでは離乳期から赤ちゃんにピーナッツを食べさせていますのでお子さんにピーナッツアレルギーが少ない傾向にあります。ところが、イスラエルの赤ちゃんが英国に移住した場合は、英国でピーナッツを離乳期の赤ちゃんに食べさせる習慣がありませんので、この場合のイスラエルのお子さんはピーナッツアレルギーが多くなります。

C固形食を生後4〜6ヶ月開始されるべきではないですが、それ以上に開始を遅らせてもアトピー性疾患の発症を予防する根拠はありません。

D口から食べた食物に関しましては免疫寛容が生じてアレルギーを起こさなくなりますが、経皮感作のような皮膚から食物が入った場合には(食物)アレルギーを起こしてきます。

E皮膚のバリア機能障害があるアトピー性皮膚炎のお子さんでは経皮感作によって食物アレルギーを起こしてくるのです。

F皮膚の遺伝子異常(フィラグリン遺伝子の異常)がありますとピーナッツアレルギーを起こしやすい傾向があります。

G湿疹のある「ぜん息」では食物アレルギーと関連がありますが、湿疹のない「ぜん息」では食物アレルギーとの関連はありません。

Hお子さんや赤ちゃんに食物アレルギーがあっても母乳を与えているお母さんの食事制限は必要ありません。

Iお子さんでは皮膚を治さないとアレルギー全体を進行させてしまいますのでまず、皮膚を治すことが大切です。

J花粉症がひどくなりますと野菜や果物で食物アレルギーの症状が出る口腔アレルギー症候群が起きてきます。
     食物アレルギーによるアナフィラキシーへの対応
食物アレルギーによるアナフィラキシーへの対応

ひやりはっと事例からのメッセージ
藤田保健衛生大学 宇理須厚雄先生講演会


1.食物アレルギーによるアナフィラキシーは

@保育園で5%くらいのアナフラキシーがあります。
A小学生で2.9%くらいのアナフィラキシーがあります。
B学童の食物アレルギーは2.6%でアナフィラキシーは0.14%くらいあります。
C誤食(本来は食物制限のある食物を間違って食べてしまう場合)は保育園で29%発生しています。

2.食物依存性運動誘発アナフィラキシー

@エビやカニが原因アレルゲンのことが多いです。
A原因食物を食べた後に3〜4時間くらい経過して運動をしますと起こすアナフィラキシーです。
(原因食物を食べただけではアナフィラキシーは起こりません。)
B茶のしずく石けんによる小麦アレルギー
女性が95.6%で男性は4.4%で全国で1540名の患者さんがいます。

3.食物アレルギーの対応は

@原因食物の除去

A食物アレルギーの過敏症(アナフィラキシー)に対する緊急対処として
A)皮膚のかゆみや蕁麻疹・口の中のかゆみには抗ヒスタミン剤の内服が必要です。
B)強い蕁麻疹や1回の嘔吐や1回の下痢・間欠的腹痛には抗ヒスタミン剤の内服やステロイドの内服が必要です。
C)全身のかゆみや全身の発赤・全身性蕁麻疹・反復する嘔吐や声がれ・咳き込みにはアナフィラキシーと考えてエピペンが必要です。
D)アナフィラキシーの時には児を横に寝かせて下肢を拳上するように足を高くして寝かせてあげるとよいでしょう。

4.食物アレルギーの急性症状に対する緊急時薬として

A)抗ヒスタミン剤
  速効性があり抗ヒスタミン作用が強く鎮静作用の弱いものが適しています。
B)内服ステロイド剤
  セレスタミンは使用しないようにしましょう。
  なぜならセレスタミンにはステロイドの量が少なく、鎮静作用のある抗ヒスタミン剤が入っているのでアナフィラキシーには適していません。
C)エピペン

5.エピペン

@保険適応になっています。

Aお子さんが自分で注射できない時は、代わりに幼稚園や学校の職員の方が注射しても良いことになっています。
(この場合に注射をした職員の方が法律に抵触することはありません。)
救急救命士の方がお子さんに携帯しているエピペンをお子さんの代わりに注射してもよいことになっています。

Bエピペンが必要な対象者は次の方です。
A)アナフィラキシーの既往のあるお子さん

B)アナフィラキシーのリスクの高いお子さん
(例えば経口免疫療法を受けている食物アレルギーのお子さん)

6.祖父母宅

食品表示をチェックしてからお子さんの食物を食べさせることが重要です。
食品表示にお子さんのアレルギーを起こす食物が含まれていないかのチェックが必要です。

7.レストラン
普通のレストランはアレルギーの原因物質が混入する可能性が高いので避けましょう。

8.自動販売装置
飲み物がノズルから出る共通のタイプの自動販売機は使わないようにしましょう。
例えばジュースもカルピスも同じノズルから出るタイプですと、カルピスの牛乳成分がジュースが出る時に混入する可能性があります。

9.菓子パン
菓子パンは卵の成分の含有量が大きく違うことがありますので、注意が必要です。
例えばメロンパンにはたくさんの卵が入っています。普通の菓子パンを食べても大丈夫な卵アレルギーのお子さんがメロンパンを食べますと
卵の含有量が多いので卵アレルギーの症状が出ることがありますので、メロンパンは注意しましょう。

10.幼稚園・学校・施設

@園や学校の職員がお子さんの食物アレルギーの情報を共有することが大切です。
例えばお子さんのクラスの担任の先生だけが食物アレルギーのことを知っていても、他のクラスの担任の先生も食物アレルギーの情報を知っていませんと、誤食が起こります。
牛乳アレルギーのお子さんが園のパーティーでお子さんの担任ではない先生にカルピスを与えられてアナフィラキシーを起こすこともあるのです。

A給食の配膳は除去食の方から配膳しますと誤食が防げます。

B食事中と食後に食物アレルギーのお子さんの経過を観察することを怠らないように先生が注意をはらいましょう。

C雑巾を触ったら牛乳アレルギーのお子さんの眼が腫れたこともあります。
これは担任の先生がこぼした牛乳を雑巾で拭きとりよく洗っておきましたが、この雑巾を触ったら牛乳アレルギーの症状が出たのです。
おそらく雑巾に少しだけ牛乳が残っていたのでしょう。

Dピーナッツの豆まきや蕎麦打ち体験やうどん作り体験やうどん作り体験・牛乳パック回収などの行事にも食物アレルギーのお子さんは注意が必要です。
     食物アレルギー治療における皮膚バリア機能改善の重要性
食物アレルギー治療における皮膚バリア機能改善の重要性

神奈川県立こども医療センター 栗原 和幸先生講演会


 1.偏らず幅広く食べることでアレルギー反応を抑制することが出来ます。

 2.例えばイスラエルでは離乳期からピーナッツバターを与えていますので、ピーナッツアレルギーが起きません。
   ところがイギリスに移住したイスラエルのお子さんはイギリスでは離乳期にピーナッツバターを与える習慣がないので離乳期にピーナッツアレルギーが起きてきます。

 3.人工栄養(ミルク)の方が母乳より、アレルギーの要因を示す特異的IgEの値が低い傾向にあります。
   牛乳アレルギー(ミルクアレルギー)の予防対策として早期からミルクを飲ませた方が牛乳アレルギーは少ないのです。

 4.食物アレルギーから発症するアトピー性皮膚炎もありますが、実はアトピー性皮膚炎から発症する食物アレルギーも大きいのです。
   皮膚バリア機能障害をおこしている、アトピー性皮膚炎の治療が食物アレルギーにとってはとても大切なのです。

 5.早期発症が持続性のアトピー性皮膚炎はフィラグリン遺伝子異常との相関関係があります。
   ピーナッツアレルギーのお子さんでは、健康のお子さんに比べてフィラグリン遺伝子異常がとても多くみられます。

 6.アトピー性皮膚炎では非ステロイド系の外用薬は適切ではありません。

 7.アレルゲンが皮膚から暴露して経皮感作を起こしますと、食物アレルギーを発症してきます。
   皮膚バリア機能の改善(アトピー性皮膚炎の治療)が大切なのです。
 
 8.アレルゲンが経口暴露しますと経口免疫寛容が起こり、食物アレルギーを抑制します。

 9.ステロイドの外用薬で皮膚を良くしてからプロトピック軟膏に変更しますとプロトピック軟膏の顔の刺激感は少なくすみます。

10.食物アレルギーを心配して母乳栄養のお母さんが自分の食事制限をする必要はありません。
   お母さんが卵1個食べても母乳に出てくる卵は10万分の1という、とても微量でありますので通常は問題はありません。
   母乳栄養を与えているお母さんの食事制限は必要ありません。
     「食べること」を目指した食物アレルギー治療の実際


同志社女子大学 伊藤 節子先生 講演会

 1.乳幼児期の食物アレルギーは80%が遅発性の症状のものでアトピー性皮膚炎が多いです。

 2.乳幼児期の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は母乳を飲んでいる赤ちゃんがほとんどです。
   この赤ちゃんがミルクを初めて飲むと、急性の重症食物アレルギーの症状が出てきます。(即時型反応:アナフィラキシー)

 3.食物アレルギーを発症する乳児はアトピー素因を有しています。
   また食物の他に犬の皮くずや猫の皮くずにアレルギーをもっていることが多いです。

 4.赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時に、経胎盤性のアレルギーが起きてくる確率は0.5%で出生前にアレルギーが起こることよりも、出生後にアレルギーが起こることが多いのです。

 5.離乳食開始前のアトピー性皮膚炎の乳児の食物アレルゲンにアレルギー反応を示してくるのは
   @卵
   A牛乳(母乳栄養児の方がミルク栄養児よりアレルギーを起こす確率が高いです。)
   B小麦

 6.食物アレルギーによる症状では、生涯で最初におこるアレルギー疾患のことが多いです。

 7.食べることを目標とした食事を考えることが大切で、必要最低限の除去食にしましょう。

 8.食物アレルギーはアトピー素因は強いグループですので、早期より室内の環境整備を開始しましょう。
   例えば室内ペットの禁止や受動喫煙の回避です。

 9.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は
   @室内環境の整備
   Aスキンケア
   B適切な軟膏の塗布
   C食物アレルギーの疑いのある赤ちゃんは2週間除去してみましょう。
    (母乳も除去してみた方が良いこともあります。)
      A)これで症状が変わらなければ食物アレルギーの心配はありません。
      B)これで症状が軽快しますと食物アレルギーの可能性になります。この場合には母乳を飲ませて症状をみましょう。

10.乳児期発症の食物アレルギーに関与するアトピー性皮膚炎では、年齢とともに食物アレルギーの出やすさが減少してきます。

11.乳児期発症の食物アレルギーで、即時型反応を示したグループは「ぜん息」になりやすいです。

12.お子さんの成長自体が食物アレルギーが治っていく重要な因子です。これは成長に伴ない消化管(腸)の能力が改善してくるためです。

13.食物アレルギーが起こるかもしれないといって、離乳食の開始を遅らせることは必要ありません。

14.家庭料理をベースに食品除去するのが良いでしょう。

15.普通の「お醤油」はアナフィラキシーを起こしていません。
   (原材料として小麦が使用されていますが、極微量なので問題はありません。)

16.たまたまアレルギーの検査をして牛乳アレルギーの反応が出たとしても、混合栄養や人工栄養で症状が出なければ継続して良いでしょう。

17.牛乳は加熱しても牛乳アレルギーの原因物質のカゼインが変化しないので注意しましょう。
   牛乳は加熱してもこのような状況なので、牛乳アレルギーは卒業しにくいです。

18.大豆アレルギーがあっても味噌・醤油・大豆油は食べられる可能性が多いです。

19.魚アレルギーがあっても、かつおぶしのだし汁は大半が食べても問題はありませんし、缶詰の魚肉は食べられることが多いです。

20.卵ボーロは生卵に近い卵抗原量をもっています。
   クッキーの方が卵ボーロよりはるかに卵抗原量が少ないです。

21.牛乳アレルゲン除去ミルクは牛乳アレルギーの原因であるカゼインはほとんどみられません。

22.パンの中の牛乳の抗原量はとても少ないです。

23.うどんの中の小麦よりパンの中の小麦の抗原量が多いのです。

24.固ゆで卵を直後に卵黄と卵白に別々にしますと、卵の抗原量は少ないのですが、茹でた後にしばらくしてから卵黄と卵白を別々にしますと、卵白が卵黄に溶け出してしまい、卵の抗原量が卵黄の中に増えてしまうので、注意が必要です。

25.乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎で、食品除去中にもかかわらず症状が悪化した時には、除去食品以外の食品が原因のことがあるので、食物負荷試験が必要です。

26.食品除去を解除している時に、体調不良や運動・入浴・非ステロイド系鎮痛剤などの要素が加わりますと食物アレルギーの症状が再燃や悪化しやすいです。

27.赤ちゃんの家族歴にアレルギーの病気があっても、赤ちゃんの離乳食を遅らせることは必要ありません。
   どうしても心配なときにはお魚→お肉→豆腐→卵と離乳食を進めていっても良いでしょう。

28.お肉のアレルギーはないと考えて良いでしょう。



  

     食物アレルギーの新しい考え方

神奈川県立こども医療センター
栗原 和幸先生講演会より


@母乳の中には赤ちゃんのアレルギーを抑える物質が入っています。

Aアトピー性皮膚炎を発症してそのままの状態でいますと、食物アレルギーが起こりやすくなります。

B食物アレルギーのアナフィラキシーショックの死亡例は平均で2.9人/年と少なく、食物アレルギーで死亡することは極めて少ないと考えられます。
食事は偏らないで幅広く食べることで、お子さんのアレルギー症状は抑えることができます。

Cアレルギーを発症している状態でも、大量に食物を1回食べておくか、または大量の食物を連日食べておくとアレルギーは起こりにくくなります。

Dアトピー性皮膚炎で食物アレルギーがある場合に、皮膚の状態を治療して良くしておくと、食物アレルギーの症状も気にならない程度に減ってきます。

E皮膚の中のフィラグリン遺伝子の異常がありますと、皮膚が保湿することが出来なくなり、皮膚のバリア機能が壊れてしまい、結果としてアトピー性皮膚炎が起こり、皮膚の表面から食物が体の中に入ってきて食物アレルギーが起こるのです。

F皮膚の異常がありますと、ピーナッツアレルギーが起こってきます。

G食物を口から食べますと(経口暴露)食物アレルギーのお子さんでも慣れが生じて、食物アレルギーを起こさなくなります。
食物に対して耐性が出来るのです。例えば赤ちゃんの時に卵アレルギーだったお子さんが、1才過ぎから卵アレルギーを起こさなくなってくるのは、この耐性が出来るからなのです。

H食物が皮膚に付着して皮膚から食物が吸収されますと(皮膚暴露)食物アレルギーを起こしてくるのです。

a)例えばピーナッツオイルをお肌に使用しているお子さんではピーナッツアレルギーが多くなります。(経皮感作)
b)例えば小麦を食べていて全く問題がなかった人が、小麦の入った石けん(茶のしずく石けん)を使ったところ、皮膚から小麦が吸収されて小麦のアナフィラキシーショックを起こしました。(経皮感作)

I離乳食が始まる前に皮膚がカサカサしていますと、経皮感作が起こります。

J経母乳感作?
母乳は赤ちゃんが飲んでいるので、これがすでに経口免疫寛容の状態で、母乳を飲んでも赤ちゃんはアレルギーにはなりません。
母乳の中にはアレルギーを抑える物質が入っていますので、この母乳を食物と一緒に赤ちゃんが食べることで、赤ちゃんが免疫反応(アレルギー)を起こすのを抑えてくれます。
経口免疫寛容は食べた方が治るということにもなる可能性があります。

K急速特異的経口耐性誘導

a)入院しての治療ですが、例えば卵アレルギーのあるお子さんに1日何回も卵を少量から与え始めて、日毎に増やしていき最終的には加熱して卵を1個たべれるようになるものです。(平均14日間で可能になります。)短期間に集中しておこなわれる治療です。
この治療中にみられる食物アレルギーの症状は軽いものがほとんどで、アナフィラキシーのような重症の症状はみられません。(卵・ピーナッツ・小麦)
ただし牛乳の場合少し症状は重く出ることがあります。

b)急速免疫寛容治療で食物が食べられるようになっても、その後もその食物を食べ続けることが必要になります。
そうしますと血液検査の食物のIgE値(アレルギーの反応を示すものです)が次第に下がってきます。

c)急速免疫寛容治療の成功率は100%です。
日常生活で食べれるようにするのが100%です。

d)急速免疫寛容治療はピーナッツアレルギーの場合はピーナッツのIgE値が一時的に上昇しますが、その後に次第に下がってきます。

L緩徐特異的経口耐性誘導

a)例えば卵アレルギーのあるお子さんに卵を1日1g食べてそれを一週間継続して、症状が出なければ30%増やして一週間継続します。
このように少量をゆっくり時間をかけて食べる治療法です。
大豆アレルギーなら味噌・しょうゆ・納豆を食べてみるのです。

b)例えば血液検査でIgE値も高値で食物に対してのIgE値も高値であっても、少しずつ食べてみれば意外に食べられるようになるのです。「ちょっとずつ」食べてみるとよいのです。
この時に皮膚にアトピー性皮膚炎がある場合はステロイドの塗り薬の治療でアトピー性皮膚炎を良くしておくとIgE値も食物に対するIgE値も下がってきます。

M妊娠中のお母さんの食物除去は不要です。

N授乳中のお母さんの食物制限は赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を悪化させることはありません。

Oピーナッツアレルギーはピーナッツを赤ちゃんの早い時期から食べていると起こしにくい傾向がみられます。
つまり、食物はなるべく離乳食時期から食べ始めると食物アレルギーを起こしにくくなるのです。

P食物アレルギーで最も大切なことは

a)適切なステロイドの塗り薬を使用して皮膚のバリア機能を改善することです。
アトピー性皮膚炎が適切に良い状態にコントロールされていないと食物アレルギーには良くありません。

b)積極的に食物を口から食べることです。食べて治す食物アレルギーということです。

Q母乳と人工栄養(ミルク)はどちらがアレルギーを起こしやすいかの結論は出ていません。

R生後2週間から人工栄養(ミルク)を始めているとミルクアレルギーは起こしません。

S乳幼児の「いくらアレルギー」がとても増えています。
赤ちゃんにちょっとだけ周囲の人が「いくら」を与えると、アレルギーを起こしてしまう可能性があります。

21「そばアレルギー」はそばの粉を吸い込むとアレルギーを起こしてきます。

22「魚アレルギー」はちょっとずつ魚を食べてみるとアレルギーを起こさなくなります。
ただし魚そのものに手で触れないことが大切です。

23卵アレルギーで卵を除去しているお子さんには、卵ボーロをちょっとだけ食べて、症状が出なければ少しずつ食べる量を増やしていけば良いのです。


      成人における食物アレルギーの実態 

国立病院機構 相模原病院
福富 友馬先生 講演会より


@成人では小麦アレルギーと果物アレルギーが合併することはありません。
 単独の食物アレルギーが多いのが特徴です。

Aカバの木の花粉にはバラ・マメ・セリがあります。
 
 1.バラの花粉のアレルギーの人は、リンゴやサクランボ・モモ・梨・苺・びわに食物アレルギーを起こすことがあります。
 2.セリの花粉のアレルギーの人は、人参の食物アレルギーを起こすことがあります。
 
B成人の魚アレルギー

 1.魚の中にいるアニサキスという寄生虫が原因のことが多い傾向にあります。
  この場合にはもともと魚を食べていますが、それだけではアレルギーの症状はでません。

 2. 成人における純粋な魚アレルギーはとても少ないのです。
 
 3.魚のコラーゲンによる魚アレルギーはあります。
   例えば魚のコラーゲン入りクリームを顔に塗っていて、アレルギーが起こり瞼が腫れることがあります。

C果物野菜アレルギーの成人は花粉にも多数アレルギーを持っていることが多いです。

D小麦運動誘発性アナフィラキシー
  
 小麦を摂取(食べて)運動をした後に、蕁麻疹や血圧低下などのアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

E小麦含有の石けんを使い始めますと、顔の皮膚から小麦の成分が吸収されて、アレルギーを起こして瞼が腫れてきます。
 これは女性に多くみられる小麦アレルギーで石けんの使用中止で症状は改善します。
      食物アレルギーと気管支喘息 

国立病院機構 相模原病院 海老原元宏先生講演会より

@食物アレルギーのお子さんの「ぜん息」合併率は高い傾向にあります。
A食物アレルギーにみられる赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、ぜん息発症の危険因子(リスクファクター)となります。
Bぜん息がありますと、食物アレルギーの重症化の危険因子(リスクファクター)となります。
 食物アレルギーによるアナフィラキシーショックで死亡したお子さんには「ぜん息」の合併症が多くみられます。
Cアトピー性皮膚炎の治療をきちんとしておくと皮膚からの食物の侵入を抑えられるので、ぜん息の発作を抑えられる印象があります。
食物アレルギーに合併している「ぜん息」はきちんと治療しておくことが大切です。
D食物アレルギーで「ぜん息」を合併することが多いのは、牛乳アレルギーや卵アレルギー・小麦アレルギーのお子さんですが、この中でも牛乳アレルギーのお子さんの「ぜん息」の合併症が最も高い特徴があります。
E軽い食物アレルギーより重症な食物アレルギーの方が「ぜん息」の合併症が高くなります。
Fアトピー性皮膚炎と食物アレルギーを合併していてまだ「ぜん息」になっていない1才未満のお子さんは、その後の「ぜん息」の発症率は20%と高く男の子に多くみられます。
G3才のお子さんの「ぜん息」の危険因子(リスクファクター)は、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーになります。
      アナフィラキシーショック

@ 私の息子が食物アレルギーによるアナフィラキシーショックを起こして救急車で病院に運ばれました。
彼は海外でホームステイしていましたので、私との連絡は携帯電話とメール、携帯電話の写真でした。

Aアナフィラキシーというのは、何らかの食物を食べて起こすアレルギー症状で、主な症状はじんましんが出たり、症状が進むとまぶたや口唇や顔が腫れたり、皮ふが赤くなったりしてきます。
皮ふ症状は短時間で悪化していきます。
彼の場合、まぶたや口唇が腫れ、顔全体がむくんだように腫れあがりました。そのため目が開けにくくなりました。

Bさらに症状が進むと、皮ふ以外の症状が加わります。
下痢や嘔吐、吐き気のようなお腹の症状が出たり、血圧の低下によるめまいや意識低下を起こしてきます。
このような状態をアナフィラキシーショックといって、重症の食物アレルギーの症状になります。
彼は下痢や吐き気、呼吸困難やめまいを起こしていました。症状が重く、救急車でスペインの病院へ運ばれました。
彼は小麦材料の食事のあとにイブプロフェンという鎮痛剤を飲んだところ、症状が出ています。
小麦アレルギーの素因を本来持っていて、鎮痛剤を服用したことで食物アレルギーが出たのではないかと思われます。
このように、食物を食べただけではアレルギーを起こさないのに、食物プラス一定のお薬とでアレルギーが起こることがあります。

Cこれらの症状の経過の写真を日を追ってホームページの「写真でわかるこどもの病気」に
掲載させていただきました。
どうぞ、この貴重な写真を是非とも参考にされて下さい。

D食物アレルギーは時として重症のアナフィラキシーやアナフィラキシーショックを起こすことがあります。
お子さんを持つお母さん方にお願いがあります。
もし、皆さんのお子さんが私の息子のように顔や瞼の腫れが短時間にみられた時には必ず救急車を呼び、病院へ急行してください。
息子は助かりましたが治療が遅れれば命にかかわります。
      診断と治療の最新情報
藤田保健衛生大学 宇理須 厚雄先生講演会 より

*食物アレルギーの食品除去は、必要最低限にすることが大切です。

*食物アレルギーの原因食品でも「低アレルゲン化」されているものは食べることができます。

*食物アレルギーの原因食品でも、安全に食べることにより、耐性が生じてアレルギーを起こしにくくなります。

*小麦が入った石けんで顔を洗ったあとに運動したら、顔の発赤、腫脹といったアナフィラキシーショックを起こす事があります。
これを「小麦運動活発性アナフィラキシー」といいますが、血液の小麦アレルギー検査が陽性にならないことがありますので、注意が必要です。

*ピーナッツアレルギーがあるお子さんの「50%」はその他のマメ類にもアレルギーがあります。

*エビアレルギーでカニアレルギーのあるお子さんは「75%」です。

*何らかの魚アレルギーのあるお子さんでそれ以外の魚にもアレルギーがある方は「50%」くらいいます。

*小麦アレルギーで大麦アレルギーもあるお子さんは「20%」くらいいます。

*牛乳アレルギーで牛肉アレルギーもあるお子さんは「10%」くらいいます。

*牛乳アレルギーでヤギ乳アレルギーのあるお子さんは「92%」くらいいます。

*牛乳アレルギーで馬乳アレルギーのあるお子さんは「4%」くらいいます。
      新生児・乳児のミルクアレルギー

〜静岡県立こども病院  木村光明先生講演会より〜


新生児・乳児のミルクアレルギーは・・・

*嘔吐、血便、下痢が主な症状ですが、中にはショック症状や発達障害、体重増加不良などを起こす事もあります。

*ミルクアレルギーのある赤ちゃんのほとんどが、生後1ヶ月以内に症状が起こります。
ミルクを開始してから消化管症状(嘔吐、下痢、血便など)が早期に出現しますが、ミルクを中止すると症状は消えます。

*原因食物は普通ミルク、大豆乳、母乳などのミルク類ですが、そのうち最も多いのが「普通ミルクによる牛乳アレルギー」です。

*ミルクアレルギーを発症した赤ちゃんは、その後に「アトピー性皮ふ炎」〜「食物アレルギー」〜「ぜんそく」〜「スギ花粉症」の順に、他のアレルギーの病気を合併してくることが多い傾向があります。

       食物アレルギーの診断と治療
〜藤田保健衛生大学 宇理須先生 講演会より〜

赤ちゃんで多数の食物アレルギーがある場合、

@まず、低アレルギーミルクを開始してみます。
A次に野菜を食べさせてみます。
Bその次には動物性タンパク質(肉、魚)を食べさせてみます。
肉については、アレルギーの検査の値が高くても、食べられるようになるケースがほとんどです。
C食物アレルギーは0才の赤ちゃんに最も多い傾向がありますが、
多くのお子さんは自然に食物対しての耐性(慣れ)を獲得して、成長とともに食物アレルギーを卒業しています。
Dまだ、小麦・卵・ミルクを食べていない時期に、これらの食物に対するアレルギー検査の値が高いケースでは食物アレルギーの症状が重症化しやすいので、食べるのは禁止(除去)します。
※除去食事療法といって消極的な食物アレルギーの治療法です。
Eピーナツ・木の実・ゴマ・イカやタコ・魚類・ソバは食物アレルギーの症状が重症化しやすいので、食べるのは禁止(除去)します。
Fマグロアレルギーでは、ツナ缶の缶詰を少しずつ食べさせるとマグロアレルギーがおこりにくくなることがあります。
このようにアレルギーの原因の食物を少量ずつ食べるのを、経口免疫療法といって積極的な食物アレルギーの治療法となります。
小児アトピー性皮ふ炎の予防と食物制限 
〜国立成育医療センター大矢幸弘先生 講演会より


0才の時に湿疹があると、その後に食物アレルギーになる確率が高くなります。
(0才時の湿疹は食物アレルギーの危険因子になります。)
赤ちゃんの時の湿疹を早く治すことで、ヒフからのアレルギー(経皮感作)を予防することが出来るかもしれません。

ヒフから吸収されて起こるアレルギー(経皮感作)は食物アレルギーを促進し、逆に口から食物が入って起こるアレルギー(経口感作)は
食物アレルギーを緩和する傾向があります。
「経皮感作」をおこすとその後食物の摂取によって食物アレルギーを起こしますが、全てのお子さんがなる訳ではなく、食物の「経口感作」によって
食物アレルギーにならずにすむお子さんもいます。


妊娠中のお母さんの食物制限(卵、牛乳)は、生後12ケ月〜18ケ月のお子さんのアトピー性皮ふ炎の発症への予防効果はありません。
それどころか、赤ちゃんの出生体重を約100g低下させてしまいます。
授乳中のお母さんの食事制限も同様に、お子さんへのアトピーの予防効果はありません。

「お子さん自身」に牛乳や卵などの離乳食の開始を遅らせても、牛乳や卵の食物アレルギーの発症を予防する効果はありません。
逆に、離乳食の開始が遅いほど、アトピー性皮ふ炎や気管支ぜん息の発症が多くなります。

生後5ヶ月〜7ヶ月の早い時期に離乳食を開始すると、その後のアレルギーの病気の発症を予防する効果が期待できます。
例えば、ピーナッツアレルギーの有病率は、英国ではイスラエルの10倍になります。
イスラエルの子供は乳児期から早期にピーナッツを摂取していますが、英国の子供は逆に、遅い時期からピーナッツを摂取しています。

食物アレルギーの診断は?
@離乳食を始める前のお子さんに食物アレルギーの検査をして、卵が陽性に出たとしても、それだけで卵アレルギーと診断することはできません。
また、この結果を基にして、離乳食の初めから卵を食べさせないといった間違った食物制限をすることも必要ありません。
過度の食物制限をすると、栄養失調をおこしてしまう危険性もあるので、食物制限が本当に必要なのか正確に判断しなければいけません。

A血液検査で食物アレルギーの反応がみられないからといって「お子さんに食物アレルギーがない」とは言えない場合もあるので注意が必要です。

B1才未満のお子さんに食物アレルギーの原因食物を少量ずつ食べさせていると、1才過ぎからのアレルギーの症状を起こさないということも最近わかってきました。

Cお母さんが妊娠中や授乳中に食物制限をしても、お子さんの食物アレルギーに影響を与えることはありません。
妊娠中も授乳中もお子さんの食物アレルギーを気にせず、食事は普通にしていただいて大丈夫です。
食物アレルギーの発症の原因
1)食物アレルギーの症状の80%はヒフの症状になり、次の4つの症状になります。
      a 湿疹 
      b じんましん
      c 血管性浮腫(口唇などが腫れる症状)
      d 潮紅 (ヒフ全体が真っ赤になる症状)

2)食物アレルギーを合併するアトピー性ヒフ炎のお子さんは、1才未満に最も多くみられます。
  食物アレルギーが小さいお子さんに多いのは、腸の構造と免疫機能が未熟なことが原因です。

3)正常なヒフであれば、水分が充分に保たれて外からの刺激を防ぐことができます。
  しかしアトピー性ヒフ炎のようにドライスキンですと、ヒフの水分量が低下しているので外からの刺激が入りやすかったり、
  アレルギーの原因になる食物がヒフに付着した時にヒフの傷口から体内に侵入したりします。
  アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとの合併では、このようにヒフからアレルギーの原因物質が入り込んでいくことで食物アレルギーがおこってくるのです。

  アトピー性ヒフ炎をきちんと治療してヒフの症状を良くすることで、上記のようなヒフからの吸収によって起こる食物アレルギーを防ぐことができるのです。

4)赤ちゃんのアトピー性ヒフ炎で、口の周囲にできる接触性ヒフ炎(かぶれ)は、食前にプロぺトやワセリンなどの保湿剤を口の周囲に広めにぬっておくと予防することができます。

食物アレルギーあれこれ
卵と牛乳の初期の血液検査のIgE抗体が高いと、食物アレルギーがしばらく続くという予後をあらわしています。

焼き菓子や加熱した牛乳はアレルギーを起こしにくいので、食べることで体が食事に慣れてくる状態(経口感作)にすることができます。

卵、牛乳、大豆、小麦は将来食べられるようになる可能性が高いとかんがえられます。

ゴマアレルギーでのIgE抗体は、血液では診断できないことがあります。

エビ、カニのIgE抗体は、両者を区別することができないので、抗体の値が高くてもエビ、カニの食事制限は必ずしも必要にはなりません。
食物アレルギーによるショック症状は

 *  ぜん息などの呼吸器症状は、小麦、ピーナッツ、そば、木の実に
     多い傾向があります。
   
 *  口中の粘膜のかゆみ、腫れなどは魚卵、木の実、ピーナッツ、
     果物、エビ、カニに多い傾向があります。
    果物によって口中腫れやかゆみをおこす口腔アレルギー症候群
    (OAS)は男の子に多く見られます。
    OASの原因としてリンゴ、モモ、キウイ、ビワなどがあげられます。

 * 下痢などの消化器症状は、魚卵、ピーナッツ、木の実に多くみられます。

 * じんましんなどのヒフ症状は特に多い原因食物はありません。
    しかし、魚アレルギーで最も多いのがヒフ症状になります。
    魚アレルギーのお子さんは、1つの魚だけでなく複数の魚に
    アレルギーを起こしやすい傾向があります。
    原因としてはマグロ(ツナ缶)、タイ、カレイ、タラ、サバ、サンマ、
    アジなどがあげられます。

食物アレルギーとぜん息の合併のリスクを減らせる要因として、
   @3才までに食物アレルギーが治っていること
   A食物アレルギーが消化器症状型であること
   Bアトピー性ヒフ炎の合併がみられないこと
の3点があげられます。

食物アレルギー

食物アレルギーで過剰な食事制限と偏食をおこなうと、ビタミンD欠乏性くる病(骨の病気)や、ビタミンB12欠乏性貧血を起こすことがあり、
注意が必要です。

食物アレルギーで急性膵炎を起こすこともあります。
食物をたべて腹痛や発疹や嘔吐が急速におきた時は、単純なアレルギー症状か、食物アレルギーによる急性膵炎かで
治療と重症度がまったく異なりますので、注意が必要です。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎
ピーナッツアレルギーのお子さんの家には、ピーナッツが沢山置いてある傾向があります。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーの検査が陽性に出ることが多いと言われています。また、重症のアトピー性皮膚炎は、ダニアレルギーの関与が高いと考えられます。アレルギーの原因となる食物を一年間除去したケースでは、アトピー性皮膚炎の発疹の出現が減少する傾向にあります。
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを合併しているお子さんが、プロバイオティクス(乳酸菌製剤)を定期的にとっていると、アトピー性皮膚炎の発疹が減少したという報告と、変化がなかったという両方の報告があります。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎では、食物が赤ちゃんの皮膚に接触することで、これが刺激になって食物アレルギーが起こってくる可能性があると考えられています。
アトピー性皮膚炎の赤ちゃんには、食べ物を食べた後は、手と口・口の周りをよくふきましょう。
食物アレルギーとじんま疹
食物アレルギーのお子さんは、初めにアトピー性皮膚炎を発症する傾向にあります。
顔に湿疹がある、体重の増え方が良くない、里帰りをすると調子がよくない、ぬり薬によるかぶれが多い、経過の長い湿疹があるなどの場合は、食物アレルギーが背景にあることが考えられます。

卵と牛乳に関しては、血液検査が正常でも、実際に食べてみるとアレルギーを起こすこともあり、注意が必要です。
赤ちゃんによっては、生後2ヶ月でもミルクでアレルギー検査が陽性に出ることもあります。
疑わしい食物があれば、とりあえず除去してみるのもよいでしょう。
例えば慢性じんま疹の場合、卵を除去してじんま疹が消えれば、このお子さんは卵アレルギーとなります。
食事日記をつけて、食事とじんま疹の関係をチェックすることが大切です。
A)食物アレルギーとアナフィラキシー、アナフィラキシーショック
@何らかの食物を食べた時に皮膚にじんましんがが出たり、口の中がかゆくなったりするのが初めに出る最もポピュラーな症状です。

A 症状が進むと顔がはれたりします。

Bさらに進むと鼻水、鼻づまり、のどがしまるような感じがして、嘔吐が頻回見られ不安を感じるようになります。

Cこれがさらに進むと下痢、声がかすれたり、犬が吠えるような咳をしたり、喘息発作のように呼吸困難やゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸状態になり、手足が紫色に変化します。血圧の低下が見られ、死の恐怖を感じるようになります。

D最後にはぐったりとして脈が遅くなったり、呼吸停止、心拍停止、意識消失となります。
@〜Aを…
@〜Aをアナフィラキシーと言って、主として皮膚の症状が主なものです。
B〜Dは皮膚以外に呼吸器・循環器・神経・消化器にも症状が出現するもので、これをアナフィラキシーショックと言います。
B〜Dでは症状が重いため、ボスミンというお薬(エビペン)の注射が症状出現から30分以内に必要となります。30分以内に注射ができれば命が助かる確立が高くなりますが、30分をすぎてから注射をした場合は命がなくなる可能性が高くなります。
B〜Dは急いで病院に行くか救急車を呼びましょう。
食物アレルギーで最も注意しなければならないのがアナフィラキシーとアナフィラキシーショックです。
現在は体重15kg以上であればエビペンというボスミンの注射を患者さん本人または家族がすることが出来るようになり、学校によっては先生が行っていただけるケースもあります。

  B)食物アレルギーの原因
食物アレルギーは原因となる食物が必ずあります。乳幼児で多いのは卵・ミルク(牛乳)ですが、他に小麦・エビ・力ニ・ソバ・ピーナッツなどがあります。赤ちゃんで初めに見つかるのはミルクアレルギーです。
そして離乳食が始まると卵アレルギーがみられるようになります。
ソバ・ピーナッツはアナフィラキシーショックをおこす可能性が高いのでアレルギーのエピソードがみられたら、原則として食べさせないようにしなければなりません。ミルクアレルギーはミルクアレルギー用の特別なミルクがありますので、こちらを飲ませることになります。
卵アレルギーは…
卵アレルギーは1歳までは食べさせないようにて、
1歳すぎにもう一度検査をして評価をすることになります。通常の食物アレルギーでは1歳になると腸管免疫が改善して、食物アレルギーを起こしにくくなるのです。
1歳以降に卵が食べられるかどうか考えればよいのです。ただし卵アレルギーのあるお子さんには卵の成分が入っているワクチン(麻疹風疹混合ワクチン・おたふくのワクチン・インフルエンザのワクチン)は皮内テストをしながらワクチン接種が可能かどうかを決める必要があり、総合病院での接種をおすすめします。

乳幼児を・・・
乳幼児をすぎて学童児になるとミルクや卵のアレルギーよりもエビ・カニ・イカ・いくら・さけ・あわび・さばなどのアレルギーの方が多くみられるようになります。また果物アレルギー(口腔アレルギー症侯群)といって果物を食べると口の中が痒くなったり、唇がはれたり、じんましんが顔を中心として出てくるアレルギーが増えてきます。主なものとしてバナナ・キウイフルーツ・リンゴ・もも・オレンジといった、ごく普通の果物で起こすアレルギーが出てくるのです。
果物アレルギーのお子さんは花粉症の合併が多く、花粉に対するアレルギーをもっていることが特徴です。
通常の食物アレルギーは食べてから1〜2時間以内に症状が早期に出ますが納豆アレルギーでは12〜24時間以上経ってからじんましんが出るという遅く症状がでるのもみられます。

   C)食物アレルギーの治療と対策
何らかの食物を食べた時に明らかにじんましんなどのアレルギー症状が出たお子さんではその食物のアレルギーの検査が必要ですが、その他の食物にもアレルギーがみられないか検査をしておくことが大切です。ミルクアレルギーの赤ちゃんは卵アレルギーの合併がないか検査が必要ですし、果物アレルギーでは一つの果物だけでなく他の果物にもアレルギーがみられることがありますし、前述のごとく花粉のアレルギーの合併もないかどうか検討する必要があります。
実際の検査は…
実際の検査は血液検査が主になりますが、血液検査の数値によってその食物がどのくらいの確立でアレルギーの原因と考えてよいかという指標もでてきております。またこの指標ではっきりしないケースは食物負荷テストが必要になりますが、これは入院しながらの検査になります。検査データから食物アレルギーの原因として可能性が高いと判断された食物については原則として「食べさせない」ことが治療と予防につながります。

ただし「食べさせない」…
ただし「食べさせない」という食物の種類が多すぎたりすると、成長するという栄養面や精神面のマイナスな部分(体重が増えない、食物制限が厳しすぎてお母さんもお子さんも疲れきりイライラ・ピリピリする)などがおこらないように配慮することが大切です。検査データでアレルギー陽性と出ても実際には食べる事ができる食物もたくさんあります。大豆・やまいも・牛肉・鶏肉などは検査で陽性でも食べてアナフィラキーやアナフィラキシーショックを起こすことは少ないのが現状です。
食物アレルギーのある食物を制限する以外に、食物アレルギーのお薬を内服したり、抗アレルギー剤を内服したりする治療と予防がありますが、補助的治療になります。

      D)家庭や学校でできる食物アレルギーの対処方法
アレルギーの原因となる食物がわかっている場合は
あらかじめ学校に連絡をして給食では除去した食事を
作っていただきます。
万が一アレルギーの原因の食物を誤って食べてしまった場合は

@すぐに口から出してうがいをさせる。

A抗アレルギー剤やステロイド剤の内服をあらかじめ用意されているお子さんでは、これをすぐに飲ませる。

B体を動かすと食物アレルギーの症状が体全体に拡がってしまうので安静にする。

Cアナフィラキシーショックの症状が出たら、エビペン(ボスミン)を筋肉注射する。

D急いで病院へ行くか、救急車で搬送する。

※Cを行うには、日頃からエビペンをもっている事に加えて、出来れば家族が学校の先生に前もってエビペンの使用を症状出現時に注射をしていただくようお願いをしておくことが準備として重要です。

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