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      かゆみを科学するー                               アトピー性皮膚炎のかゆみのメカニズムと対策
かゆみを科学するー
       アトピー性皮膚炎のかゆみのメカニズムと対策

順天堂大学大学院医学研究科環境医学研究所、
順天堂大学大学医学部付属浦安病院 皮膚科
高森 建二先生

@健康な皮膚では表皮内に神経線維の伸長はみられません。
アトピー性皮膚炎の表皮内には神経線維が伸出していますのでかゆみをより感じやすくなっています。また、表皮内にある神経線維による「かゆみ」には通常の抗ヒスタミン薬は効果がありません。

A皮膚の乾燥を呈している肌はかゆみを伴いやすいです。

Bうるおいのある肌は皮膚の表面の細胞と細胞の間がびっちりくっついているので外からアレルゲンが入ってこないですし、皮膚の中の水分も外に出ていきません。

C皮膚の乾燥はかゆみ閾値の低下となり敏感肌になります。
敏感肌は軽微な刺激に容易に反応してかゆみが誘発されます。また、外部の刺激で過剰にかゆみが増強されます。

DPUVA療法(紫外線療法)は表皮内神経線維の伸出を減少させてかゆみを減少します。
PUVA療法が表皮内神経の伸出を低下させることでかゆみが減少します。アトピー性皮膚炎にPUVA療法をしますと「かゆみ」がとても減少します。

E表皮内神経線維の侵入(伸長)を保湿剤は抑制することが出来ます。
その結果としてかゆみが減少します。

F保湿剤の外用は皮膚の症状が軽い時期から使用すると良いでしょう。保湿剤の外用は表皮内神経線維の侵入(伸長)を抑制して、かゆみを減少させることが出来ます。

G保湿剤は、家族にアトピー性皮膚炎があるなどのハイリスクの赤ちゃんで新生児の時から保湿剤を使用しますとアトピー性皮膚炎の発症の予防が出来る可能性があります。

Hグリチルレチン酸の外用薬(デルマクリン軟膏)は皮膚のかゆみを抑制します。
これは、乾燥した皮膚の表皮内神経線維伸長を低下させてかゆみを減少させます。

Iかゆみがあるのは皮膚のバリア機能がこわれている「サイン」です。

J汗をかいたら水かシャワーで汗を流しましょう。

K学校でシャワーを浴びるとアトピー性皮膚炎の症状が改善します。

L汗をかくことは表皮内に水分が貯まるので皮膚を乾燥させないので、アトピー性皮膚炎には良いことです。

      アトピー性皮膚炎に関する最近の話題
アトピー性皮膚炎に関する最近の話題
〜日本医科大学 皮膚粘膜病態学 佐伯秀久先生 講演会〜

@血清のTARC値はアトピー性皮膚炎が重症になるほど高くなります。 血清のTARC値はアトピー性皮膚炎の病勢を反映しています。 血清のTARC値はアトピー性皮膚炎の皮疹が良くなりますと血清のTARC値は下がってきます。

Aアトピー性皮膚炎では、血清のTARC値は小児では年令が下がるほど高くなっています。  小児のアトピー性皮膚炎では、血清のTARC値は皮疹が良くなると下がってきます。

B血清のTARC値はアトピー性皮膚炎の皮膚病変の程度ととてもよくしかも短期的に病勢を反映する指標です。

Cアトピー性皮膚炎では皮膚の「水分保持能力の低下」がみられています。

Dアトピー性皮膚炎では、「かゆみ」の閾値が低下していますのでかゆみをより感じやすくなっています。

Eアトピー性皮膚炎では「かゆみ」が必発症状です。

Fアトピー性皮膚炎では、家族内にアトピー性皮膚炎がありますと発症率が上がります。

Gアトピー性皮膚炎では、二卵性双生児より一卵性双生児でのアトピー性皮膚炎の発症の一致率が上がります。

Hアトピー性皮膚炎ではフィラグリンの遺伝子異常が高くみられます。

Iアトピー性皮膚炎の炎症には、ステロイドとプロトピックの外用薬が2本柱になります。

Jアトピー性皮膚炎の炎症には、スキンケア(保湿剤の外用)が必要です。

Kアトピー性皮膚炎の炎症には、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が必要です。

Lアトピー性皮膚炎では、顔面や首の部分は、皮膚が薄いので、ステロイドの外用によっては皮膚が委縮したり、皮膚が薄くなったり、皮膚の毛細血管の拡張がおこることがありますので、顔面や首の部分にはステロイドの強いものをさけてプロトピック軟膏の方がよい場合があります。

M顔のアトピー性皮膚炎には、プロトピック軟膏が良く効きます。

Nアトピー性皮膚炎では、皮疹の強い時にはステロイドの外用で炎症を抑えて、治ってきたらプロトピック軟膏に変更して、さらに皮疹が良くなった後もプロトピック軟膏を週に3回くらいぬっていますとアトピー性皮膚炎の再燃が抑えられます。(プロトピック軟膏のProactive療法)

Oプロトピック軟膏はアトピー性皮膚炎の再燃を抑えて、ステロイドの外用薬の使用量も少なくできます。

P保湿剤はアトピー性皮膚炎の皮疹が良くなった後も保湿剤をぬっておくとアトピー性皮膚炎の再燃を抑えられます。(保湿剤での寛解維持)

Q家族にアトピー性皮膚炎がいるアトピー性皮膚炎のhigh risk の生まれて間もない赤ちゃんに生後間もなくから保湿剤を外用しておくとアトピー性皮膚炎の発症を抑えることが出来ます。

R乳幼児の湿疹を早期に治療してスキンケアをすることはアレルギーマーチの減少を出来るかもしれません。

Sアトピー性皮膚炎では、抗ヒスタミン剤を内服しながらステロイドの外用をしますと、「かゆみ」を優位に抑えることが出来ます。

21.アトピー性皮膚炎では、「かゆみ」のない時に抗ヒスタミン剤を内服していますとアトピー性皮膚炎の悪化を防ぐことが出来ます。

22.プロトピック軟膏は、海水浴やスキーなどに行くなどの特別に紫外線が多くあびる場合を除いては、普段は普通に使用しても日光の影響は心配する必要もなく問題もありません。
     皮膚外用剤の正しい使い方
「皮膚外用剤の正しい使い方」
     東京逓信病院薬剤部 大谷直輝先生講演会より

@保湿剤は、「小児のアトピー性皮膚炎」では入浴直後にぬった場合と30分後にぬった場合で比較しても保湿剤の効果は同じです。 また、入浴直後1分後にぬった場合と1時間後にぬった場合を比較しても保湿剤の効果は同じです。 入浴直後にぬり忘れても時間が経過してからぬっても保湿剤の効果はありますのでお風呂のあとは保湿剤をぬりましょう。

A保湿剤はたっぷりと優しく擦り込むようにお肌のしわにそってぬるのが良いでしょう。

B「アトピー性皮膚炎」では、保湿剤は1日2回ぬりましょう。
例えば、ヒルロイドローションは1日2回ぬった方が1日1回ぬった場合よりも、2.5倍の保湿効果が高まります。

C「乾燥皮膚」では、ヒルドイドソフト軟膏よりもヒルドイドローションの方がより有効です。

         乳幼児アトピー性皮膚炎のに                         おけるスキンケアとプロアクティブ療法
乳幼児アトピー性皮膚炎のにおけるスキンケアとプロアクティブ療法
        国立成育医療研究センター  大矢幸広先生講演会

@アトピー性皮膚炎ではステロイドの外用(塗り薬)やプロトピック軟膏の外用で皮膚の炎症をなくして寛解導入にしていくことが大切です。

Aアトピー性皮膚炎では寛解導入後(皮疹の消失後)にきれいに皮膚を保つことが大切です。この時に用いるのがヒルドイドなどの保湿剤です。

Bアトピー性皮膚炎では、見ても、触れても湿疹がゼロの状態にすることが重要です。

Cアトピー性皮膚炎で、適切な強さのステロイドの外用やプロトピック軟膏の外用を適量使っているにもかかわらず皮疹が改善しない場合は外用薬が弱すぎるか又は皮膚に真菌などがいることがあります。

D石けんを泡立てて使用して、しっかりとよくすすいで石けんをおとしましょう。石けんで皮膚の表面の細菌を洗いおとしますが、皮膚に石けんが残っていますと皮膚のバリア障害がおこりますので、石けんはしっかりと洗い落すことが大切です。

Eステロイドや保湿剤の外用は「薄皮を覆うように」なるべく「均一に」塗った方がよいのです。すりこむのは「均一にならない」のでダメです。

F再燃しやすいアトピー性皮膚炎には「プロアクティブ療法」が良いでしょう。
 プロアクティブ療法は〜
 A)皮疹がない状態でも週に2〜3回と間欠的にステロドの外用をする治療です。
   これはステロイドの副作用を回避するためです。
 B)アトピー性皮膚炎は年単位の治療が必要になる慢性疾患です。
   ステロイドの外用を毎日塗りつづけますと皮膚が薄くなる可能性はありますが、週2〜3回と間欠的に塗るのであればその心配はありません。
 C)ステロイドの外用で湿疹が速く消えたところには早期に保湿剤へ変更して、湿疹の改善が遅かったところにはプロアクティブ療法でしつこくせめるという「塗り分け」が大切です。
 D)プロアクティブ療法で皮膚がきれいになりますと自然治ゆ力が高まってきます。
 E)プロアクティブ療法でアレルゲンによる皮膚感作を受ける可能性が残ります。

Gプールに入る前に皮膚に「プロペト」を塗っておきますと、プールに入ってもアトピー性皮膚炎が悪化せずに済みます。

Hヒルドイドもステロイドと同様に弱酸性の外用剤ですので、アトピー性皮膚炎のお子さんにはヒルドイドは最も良い保湿剤ということになります。

I赤ちゃんの口の周りのよだれのかぶれはプロペトを塗ると良いでしょう。

Jアトピー性皮膚炎の発疹が悪化した時だけステロイドを外用するリアクティブ療法は炎症を根絶することは困難です。
 これに対して、間欠的にステロイドの外用をするプロアクティブ療法は炎症を根絶することが出来ます。
 プロアクティブ療法のお子さんはリアクティブ療法のお子さんに比べて、治療開始2年后でアレルギーの検査の数値の値が下がり、身長の伸びも良かった事がわかっています。

Kアトピー性皮膚炎の皮膚にヘルペスウイルス感染を合併してきますとステロイドの外用薬を塗っただけでは治りません。
 皮膚のヘルペス感染症を起こしますと、目にヘルペス性角結膜炎を起こして失明することがありますので入院治療が必要になります。

Lハイリスクの両親(両親のいずれかがアトピー性皮膚炎)から生まれた新生児に保湿剤を塗りますと赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を抑制できる可能性があります。

M乳児期の早期に皮膚をきれいにしていた方が食物アレルギーの発症を予防出来ます。食物アレルギーの予防や治療のためにも湿疹のコントロールが重要な役割をはたします。
      乳幼児アトピー性皮膚炎を見た時に何をすべきか?
 
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮フ科
     片岡 葉子先生講演会より

@乳幼児アトピー性皮膚炎の重症例は生後4〜8ヶ月がピークです。

A生後1〜4か月の間は、生理的にドライスキンになります。

B乳幼児アトピー性皮膚炎は冬に多くて、夏には少ない傾向にあります。
 乳幼児アトピー性皮膚炎は冬の乾燥が苦手です。

C乳幼児アトピー性皮膚炎は生後4か月に発症して、1才位に良くなり、
1才半位に悪化して、次に2才の冬にまた悪化します。

D乳幼児アトピー性皮膚炎の湿疹形成に食物が関係しているのは全体の30%しかありません。

E乳幼児アトピー性皮膚炎は、早期発症で重症のものが食物アレルギーが多く見られます。

F乳幼児アトピー性皮膚炎は、ステロイドの外用(塗り薬)でしっかり治すことで
食物アレルギーを防ぐ事が出来ます。

G乳幼児アトピー性皮膚炎は、炎症を放置しますとより一層加速して症状が悪化します。

H乳幼児アトピー性皮膚炎は、見ても触っても皮膚炎がゼロの状態がステロイド治療の最初の目標です。

I乳幼児アトピー性皮膚炎は、一番初めに皮膚炎が出現した部位を先に
ステロイド外用の治療をすると良いでしょう。

J乳幼児アトピー性皮膚炎は、初期に短期間のうちに皮膚の状態を見ても触っても皮膚炎が
ゼロの状態(寛解状態)にまでステロイド外用の治療をしっかりとすることがポイントです。

K乳幼児アトピー性皮膚炎の顔の重症例では、リンデロンV軟膏やアンテベート軟膏で、
ステロイド外用を開始をして、皮膚炎が良くなって来ましたらロコイド軟膏に変更して
さらに皮フ炎が良い状態なら、キンダーベート軟膏に減量していくと良いでしょう。
最後は、キンダーベートの外用を維持でぬりつづけても問題はありません。

Lキンダーベート軟膏は、乳幼児アトピー性皮膚炎の赤ちゃんの顔に1年くらい塗り続けても
皮フに全く問題はありません。

M頭皮の乳幼児アトピー性皮膚炎には、ローションタイプのステロイド外用軟膏薬より
軟膏タイプのステロイド外用薬の方が皮フの吸収が良いので軟膏タイプを使うと良いでしょう。
 食物アレルギー治療における皮膚バリア機能改善の重要性

神奈川県立こども医療センター 栗原 和幸先生講演会


 1.偏らず幅広く食べることでアレルギー反応を抑制することが出来ます。

 2.例えばイスラエルでは離乳期からピーナッツバターを与えていますので、ピーナッツアレルギーが起きません。
ところがイギリスに移住したイスラエルのお子さんはイギリスでは離乳期にピーナッツバターを与える習慣がないので離乳期にピーナッツアレルギーが起きてきます。

 3.人工栄養(ミルク)の方が母乳より、アレルギーの要因を示す特異的IgEの値が低い傾向にあります。
牛乳アレルギー(ミルクアレルギー)の予防対策として早期からミルクを飲ませた方が牛乳アレルギーは少ないのです。

 4.食物アレルギーから発症するアトピー性皮膚炎もありますが、実はアトピー性皮膚炎から発症する食物アレルギーも大きいのです。
皮膚バリア機能障害をおこしている、アトピー性皮膚炎の治療が食物アレルギーにとってはとても大切なのです。

 5.早期発症が持続性のアトピー性皮膚炎はフィラグリン遺伝子異常との相関関係があります。
ピーナッツアレルギーのお子さんでは、健康のお子さんに比べてフィラグリン遺伝子異常がとても多くみられます。

 6.アトピー性皮膚炎では非ステロイド系の外用薬は適切ではありません。

 7.アレルゲンが皮膚から暴露して経皮感作を起こしますと、食物アレルギーを発症してきます。
皮膚バリア機能の改善(アトピー性皮膚炎の治療)が大切なのです。
 
 8.アレルゲンが経口暴露しますと経口免疫寛容が起こり、食物アレルギーを抑制します。

 9.ステロイドの外用薬で皮膚を良くしてからプロトピック軟膏に変更しますとプロトピック軟膏の顔の刺激感は少なくすみます。

10.食物アレルギーを心配して母乳栄養のお母さんが自分の食事制限をする必要はありません。
お母さんが卵1個食べても母乳に出てくる卵は10万分の1という、とても微量でありますので通常は問題はありません。
母乳栄養を与えているお母さんの食事制限は必要ありません。

アトピー性皮膚炎における個別化治療:プロトピック軟膏の有用性

ヘルシンギ大学皮膚科 Sakari Reitamo先生講演会

1.アトピー性皮膚炎は緯度の高い地域に多くみられる傾向があります。

2.アトピー性皮膚炎の多くは子どもの時に改善するがその後成人してから再発することがあります。

3.アトピー性皮膚炎の50%くらいは「ぜん息」をもっています。

4.子どもの時の皮膚炎の治療がきちんとなされていないと、成人してからアトピー性皮膚炎が重症化します。

5.フィラグリン遺伝子の異常のあるアトピー性皮膚炎では「ぜん息」の症状も出てきます。
皮膚から抗原(アレルゲン)が体の中に入り込み、その結果血中のIgE抗体(アレルギーの素因を示す物質)が上昇してそれが肺にいって「ぜん息」を起こしてくるのです。

6.プロトピックの維持療法
小児のアトピー性皮膚炎に対して、プロトピック軟膏
@皮膚炎が増悪した時には1日2回塗ります。
A皮膚炎が落ち着いた後に、増悪した時のみだけプロトピック軟膏を塗るのは経過は良くありません。
B皮膚炎が落ち着いた後に1週間に2回くらいプロトピック軟膏を塗る「維持療法」は経過はとてもよいです。

7.プロトピック軟膏は使用していて皮膚の厚さを薄くすることはありません。

8.プロトピック軟膏は皮膚のブドウ球菌を早い段階で減少する作用があります。これは皮膚のバリア機能が改善することで間接的にブドウ球菌がいなくなるのです。

9.プロトピック軟膏は長期使用において皮膚の感染症が増えることはなく、むしろ少なくなっています。

10.プロトピック軟膏の使用によって皮膚ガンの発生率が上昇することはありません。

11.プロトピック軟膏の使用によりリンパ腫の発生率が上昇することはありません。

12.ただしアトピー性皮膚炎そのものがリンパ腫の発生率を上昇しますが、プロトピック軟膏の使用によりリンパ腫の発生率のリスクが上昇することはありません。

13.10年間の成人のプロトピック軟膏の長期使用では
気道過敏症・ぜん息の症状・鼻炎の症状の改善がみられています。
皮膚を治すことで気道(気管・鼻)を治すことが出来るのです。

14.小児の早期のアトピー性皮膚炎の治療が大切になります。

15.3〜24ヶ月のアトピー性皮膚炎のお子さんではプロトピック軟膏の使用を開始しても血中のプロトピックの濃度が上昇することはありません。
すなわち長期的な安全性も保たれています。

16.プロトピック軟膏は眼内圧の正常化をする効果があります。

17.プロトピック軟膏の使用がたくさん必要なのは治療開始初期だけです。
アトピー性皮膚炎の皮疹がよくなりますと、プロトピック軟膏の使用量は自然に減っていきます。
アトピー性皮膚炎の標準治療におけるプロトピック軟膏の意義

京都府立医科大学 加藤 則人先生講演会


 1.アトピー性皮膚炎では、皮膚の角質(アカ)が剥がれやすくなっています。

 2.アレルギー性疾患のない皮膚の疾患のみの児童を6年間フォローしてみますと
   @ 7.7%がアトピー性皮膚炎を発症してきます。
   A38.5%がアレルギー性鼻炎を発症してきます。

 3.触ってザラザラしている皮膚の場所には、ステロイドの塗り薬を塗りましょう。

 4.2才未満ですと、顔に10g・体に90gのステロイドの塗り薬を塗りましても、皮膚の委縮や血管拡張はおきません。

 5.ステロイドの塗り薬によって症状が良くなってきますと、その後の色素沈着症として皮膚が黒くなることは心配はありません。

 6.アトピー性皮膚炎では痒いからかくので、かくことを受け入れてあげることが大切です。
   「かいていてはダメ。」と言うのは良くありません。
   「痒いからかく人だよね。」「痒いのを良くするためにお薬を塗ろうね。」と言ってあげることが重要なのです。

 7.アトピー性皮膚炎でステロイドの塗り薬で皮疹が良くなっても痒みが強い患者さんにプロトピック軟膏を使用しますと痒みが改善します。

 8.プロトピック軟膏は使用開始しますと、初めに痒みが良くなってから、その後に皮疹は良くなっていきます。

 9.ステロイドの塗り薬で、一見皮疹が良くなっているように見えても、痒みが十分に治まっていないと、掻破で容易に再燃するケースのアトピー性皮膚炎に、プロトピック軟膏が良く効きます。

10.プロトピック軟膏は顔のみならず、全身どこの部位の皮膚に使用しても良いのです。

11.プロトピック軟膏は痒みの原因になる物質の量を減らす作用があり、これにより痒みが改善します。

12.目の周囲のアトピー性皮膚炎に塗るのは、1ヶ月のうち10日程度のステロイドの塗り薬の使用ならば、目の眼圧は上りません。

13.目の周囲のアトピー性皮膚炎にステロイドの塗り薬を塗って、皮膚が良くなりましたら、プロトピック軟膏の塗り薬に変更しますと、目の眼圧が上がる心配はありません。

14.ステロイドの塗り薬の副作用の出やすい部位に、プロトピック軟膏を使用すると良いでしょう。
   例えば
   @顔・首
     顔に塗った時の刺激感が強い時は首からプロトピック軟膏を塗ると良いでしょう。
   A肘の内側・膝の裏側
   B下腿
      C臀部(おしり) 
   D手拳
   などの部位です。

15.プロトピック軟膏の1回の使用量の上限は次の通りです。
   @2〜5才:1g
    (20s未満)
   A6〜12才:2〜4g
    (20〜50s未満)
   B13才:5g
    (50s未満)

   プロトピック軟膏はチューブから出した時の長さが5pのものがプロトピック軟膏として0.5gに相当します。
   塗る量をしっかりと使いましょう。

16.皮膚がツルツル状態になるまで、毎日ステロイドの塗り薬を塗るか、プロトピック軟膏を塗り続けて痒みが完全になくなるように塗ることが大切です。
この状態になってはじめて保湿剤に切り替えると良いのです。
もしこのプロセスで一か月以内に皮疹が再燃を繰り返す時には、皮膚がツルツルなったらプロトピック軟膏に変更して継続すると良いでしょう。

17.プロトピック軟膏はお薬が効いてくると塗った時のピリピリ感が消失します。
プロトピック軟膏を塗って刺激感が出るということは、痒みのもとが消えたことを意味していますので、皮膚が改善している証です。

18.プロトピック軟膏を適正に使用していますと、リンパ腫の心配はいりません。

19.プロトピック軟膏を塗った時の日光の影響を心配される場合は、朝塗らずに夜塗れば大丈夫です。
プロトピック軟膏は日常生活の範囲では使用されていても日光の影響は心配ありません。

20.ステロイドの塗り薬を塗って、皮疹も痒みも良くなっている人はステロイドの塗り薬だけで十分です。

21.ステロイドの塗り薬を塗って皮疹は改善するが、痒みが良くならないケースはプロトピック軟膏を使用すると良いでしょう。
アトピー性皮膚炎の病態とかゆみ治療

東京大学 佐藤 伸一先生講演会より

@アトピー性皮膚炎は「フィラグリン」の機能異常によっておこる皮膚のバリア異常が原因です。

Aフィラグリンの機能として

 1)皮膚の表皮細胞を平坦化して皮膚を守ります。
   (バリア機能をつかさどっています。)

 2)天然の保湿因子でもあります。

B日本人のアトピー性皮膚炎の20%以上でフィラグリン遺伝子異常が認められます。

Cフィラグリン遺伝子の異常がみられますと、皮膚のバリア機能障害が誘発されます。

D皮膚のバリア機能異常がありますと、皮膚が外来アレルゲン(例えば食物・ダニなど)に対して何度も暴露されますので、Th2のアレルギー反応にシフトします。

ETh2アレルギー反応にシフトしますと、表皮の湿疹に変化が誘導されて、さらに血液中のアレルギーの数値を示すIgE抗体が増加していきます。

FTh2のアレルギーにシフトしますと、フィラグリン発現の低下がおこり皮膚の障害がおこります。

Gアレロックはその他の抗ヒスタミン剤に比べて、発疹を抑制する効果が高い特徴があります。

Hぬり薬単独使用ですと「かゆみ」の再発がありますが、「ぬり薬」や「アレロックの内服」ですと「かゆみ」の再発率が低下します。

I「かゆみ」のない時でもアレロックの内服をしていますと、「かゆみ」が抑制されます。

Jアレロックは短期の一時的な内服より、長期の連続内服の方が「かゆみ」に効果があります。

Kアレロックは抗炎症作用が最も強い抗ヒスタミン剤です。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症ですのでこれを改善してくれます。

Lアレロックは抗ヒスタミン剤によくみられる「仕事や勉強の機能が低下するインペアードパフォーマンス」が最も少ない抗ヒスタミン剤です。

M小児においてアレロックが最も効果がある抗ヒスタミン剤と言えます。

アトピー性皮膚炎の治療
福井大学 大嶋勇成先生講演会より

@誤った食事制限は栄養摂取不足や偏りが生じます。例えばミルクアレルギーで抗アレルギーミルクを飲んでいて湿疹になった場合は抗アレルギーミルクは栄養成分の一つであるビオチンがないこともありビオチン欠乏症をおこして湿疹が治らないケースがあります。この場合は塗り薬ではなくビオチンを内服すれば良くなります。

Aアトピー性皮膚炎と思ってアトピー性皮膚炎の治療をしていて良くならなければWAS(ウィスコットアルトリット症候群)のような免疫不全症による湿疹を考えて、その治療をしないと良くなりません。WASは新生児で血小板が低値で湿疹がある事が特徴で骨髄移植が治療法になります。

Bアトピー性皮膚炎のように思えてもアトピー性皮膚炎の治療をして良くならない時には他の病気を考えて、原因を探して、それを治療することが大切です。

Cアトピー性皮膚炎では湿疹部分からの組織液の漏出があるために低タンパク血症や低ナトリウム血症をおこしてきます。

Dアトピー性皮膚炎の症状は「ぜん息発症」の危険因子となります、ダニアレルギーがあり皮膚症状が良くないと、この傾向は著明です。

E抗ヒスタミン薬の「アレロック」には皮膚のバリアキノウ障害の改善効果があります。

Fダニアレルギーのお子さんでは抗ヒスタミン薬の「ジルテック」投与により、アトピー性皮膚炎のお子さんの「ぜん息発症」の予防効果があります。

Gダニアレルギーがあるお子さんが、お肌が早期にいろいろな抗原にさらされてしまうと「ぜん息」への移行が多いので早期にアトピー性皮膚炎を治療してお肌を良くすることが大切です。

Hお子さんの「アトピー性皮膚炎」と「ぜん息」の合併している患者さんにプロトピック外用療法を行ない「アトピー性皮膚炎」の症状を良くしますと「ぜん息」の症状も良くなります。

I乳児の湿疹による睡眠障害は、10才児の時の精神症状影響が出ます。

J学童期は、かゆみ止めのためにボーとして勉強に集中できない面がアトピー性皮膚炎で多くみられます。大切な事はスキンケアと外用剤と非鎮静性の抗ヒスタミン剤(眠気のおこらない内服のかゆみ止め)を使うことです。

K未熟児に保湿剤を使用しますと皮膚の炎症を予防することが出来ます。(早期の保湿剤の開始はアトピー性皮膚炎を防げる可能性があるのです。)
アトピー性皮膚炎のスキンケアと外用療法
杏林大学医学部 塩原哲夫先生講演会より

1.アトピー性皮膚炎のお子さんは「秋」に生まれたお子さんが多い傾向にあります。

2.何故アトピー性皮膚炎が増えたのでしょう。それは「汗」をかく機会が減ったためです。

3.汗腺(汗を分泌する組織)2才半までに出来上がります。

4.お子さんの方が大人の人より汗っかきです。

5.最近のお子さんは全身の汗をかくことが減り、逆に手のひらに汗をかくことが増えています。

6.皮膚の一番表面の角層という部分に、いかに水分をためておけるかがスキンケアのコツになります。

7.野外での夏期の相対湿度の低下と冷暖房の普及が角層内水分量の低下になり、お肌が乾燥してくるのです。
昔は野外は暑く湿度も高く冷房の設備もなかったので、一杯汗をかく機会があったのです。

8.保湿剤(ヒルドイド)を乾燥した皮膚に塗りますと角層内水分量が増加します。

9.ステロイドの外用剤を乾燥した皮膚に塗りますと角層内水分量が低下します。

10.「汗」をかきますと、角層内水分量が増加します。

11.角層内水分量を低下させる薬剤として抗ヒスタミン薬や抗うつ剤があります。

12.「汗」の中には抗菌物質が複数入っています。この抗菌物質の中には皮膚の善玉菌はやっつけないで悪玉菌をやっつけてくれる働きがあります。
ですので発汗が減少しますと抗菌作用が低下しますので「とびひ」や「カポジ水痘様発疹症」などの皮膚の感染症を起こしやすくなるのです。

13.運動をしますと汗をかきますので角層内水分量が増えますので、この状態で保湿剤(ヒルドイド)をぬりますと更に角層内水分量が増加します。

14.プロトピック軟膏はステロイドの外用薬と違ってぬりましても角層内水分量はあまり下がりません。

15.アトピー性皮膚炎では発汗反応が低下していますので、アトピーの発疹のあるところでも発疹がないところでも皮膚に汗をかかない特徴があります。

16.アトピー性皮膚炎では汗をかかせた方が良いのです。

17.アトピー性皮膚炎では発汗の減少により角層内水分量が減少して炎症が起こしてくるのです。

18.保湿剤(ヒルドイド)は発汗反応を改善させます。保湿剤(ヒルドイド)をぬったところは発汗が促進されます。ステロイドの外用をぬったところは発汗が低下します。

19.全身のバランスの良い発汗が大切です。アトピー性皮膚炎では暑い環境にいても汗をかきませんので暑い環境が苦手です。

20.アトピー性皮膚炎では全体の発汗量がとても低下しています。

21.保湿剤のヒルドイドは発汗を亢進させますが、ワセリンは逆に発汗を低下させます。

22.汗をかくには、冷房はあまりつけない方が良いことになります。

23.次の3点がありますとアトピー性皮膚炎になりやすくなります。

 1)学生時代に激しいスポーツをしていた人が急にスポーツをやめた場合
 2)入浴を止めてシャワーのみにするようになった場合
 3)ナイロンタオルで皮膚をこする場合

24.成人の難治性皮膚疾患では一保湿剤のヒルドイドソフトを25g(1本)/日と大量に使用しますと皮膚の状態が改善してきます。この場合にたっぷりと厚く塗って、その上からサランラップでおおってヒルドイドがとれないようにすることが大切です。ヒルドイドソフトは、お風呂を出でから直後に塗ると良いでしょう。

25.保湿剤はジェネリックのものでは角質水分量の増加がほとんど見られず効果がありませんので注意が必要です。

26.保湿剤は皮膚部(発疹のある部分)以外にも使用することが大切で厚くたっぷりと、たくさんぬると良いでしょう。

27.シャワー浴より入浴のが角質内水分量にとっては良いことになります。

28.プロトピック軟膏はステロイドの外用薬と異なって皮膚を乾燥させることはありません。皮膚の発汗低下が皮膚を乾燥させる最大の原因です。

29.赤ちゃんのアトピー性皮膚炎ではオムツのところには発疹があまりできません。これはオムツをしている部分は発汗が亢進しているので乾燥しないからです。

30.アトピー性皮膚炎で感染を起こした時はステロイドの塗り薬を使用した方が感染の原因の細菌の減少が抗生剤のぬり薬より速い場合があります。
          小児アトピー性皮膚炎患者のQOLを考える


国立病院機構三重病院 藤澤隆夫先生講演会より


1.アトピー性皮膚炎はQOL(生活の質のレベル)を著しく低下させる特徴があります。
  
 @強いかゆみは
  不眠・落ち着きがない・いらいらする・集中出来ないなどの症状を起こしてきます。

 A外見上の問題で
  外見が気になり外出ができなくなります。
  いじめにあったりします。

 B合併症として
  発育不良をおこしてきます。

2.乳幼児期のアトピー性皮膚炎のQOL

 @乳幼児期ではお子さんを育てている養育者(例えばお母さん)のQOLを評価することが大切です。

 Aお子さんのアトピー性皮膚炎があることで、お母さんが疲労感を感じたり、夜眠れないなどのお母さんのQOLが下がってしまうことがあります。

 B例えばかゆみを抑える「アレジオン」という抗ヒスタミン剤をお子さんが内服し始めますと、かゆみが減ります。
かゆみが減ってお子さんの皮膚の症状が改善しますと、お母さんのQOLが良くなります。

 Cお子さんのアトピー性皮膚炎を治していく上でお母さん以外の家族の人が、お母さんに協力してくれているとお母さんが感じることが重要です。
そのような環境になりますとお母さんのQOLが改善してくるのです。
お母さんが一人で頑張ってお子さんのアトピー性皮膚炎を治すのは良くないのです。家族の協力が必要です。

 Dお母さんのQOLが低いと、母子関係がうまくいきません。
 お母さんのQOLが良いことが乳幼児のアトピー性皮膚炎を治す上で大切なことなのです。

 EQOLの高いお母さんはQOLの低いお母さんに比べて喜びを一層感じる傾向にあります。

3.学童期のアトピー性皮膚炎のQOL

 @アトピー性皮膚炎のお肌のせいで、学校や水泳を休んだりしないかが大切です。

 Aかゆみ止める抗ヒスタミン薬「ザイザル」を内服しますと投与開始後2〜4週間でかゆみの改善がみられ、日中と夜間のかゆみが改善します。
 アトピー性皮膚炎が原因で学校や水泳を休むという日常生活のQOLは内服開始後2週間という早い時期から改善がみられます。

 Bねむけの副作用は学童期の「ザイザル」を使用したお子さんでは一例もみられませんでした。

 C「ザイザル」は7歳以上15歳未満のアトピー性皮膚炎のお子さんで、すでにステロイドの塗り薬を使用している例で、1回2.5rを1日2回服用で効果があります。
 
4.お子さんの保護者が「親がアレルギー体質だから子どもさんがアレルギーなのは仕方ない」とあきらめてしまうことが、学童期のアトピー性皮膚炎でみられていて、これがお子さんのQOLを低下させています。

5.アトピー性皮膚炎が悪化した時だけステロイドを塗るというのはお子さんのQOLを低下させます。

6.お子さん自身がステロイドの塗り薬を面倒くさいと思ってしまうのも、お子さんのQOLを低下させます。
アトピー性皮膚炎アトピー性皮膚炎治療のエンドポイント
国立三重病院 藤澤隆夫先生講演会より

@アトピー性皮膚炎は生活の質を著しく低下させてしまいます。
 1)強いかゆみは〜
  不眠をおこします。
  落ち着きがなくなります。
  勉強に集中できないお子さんになります。
 2)外見上の問題が〜
  外見が気になって外出が出来ないことがあります。
  友達からいじめられることがあります。
A生後4ヶ月(乳児期)発症のアトピー性皮膚炎と3才以降発症のアトピー性皮膚炎は異なります。
Bアトピー性皮膚炎の重症度と血液検査のTARC値は相関があります。
 1)重症のアトピー性皮膚炎ではTARC値が高くなります。
 2)アトピー性皮膚炎を治療する前と治療した後で比較しますと、治療前に高かったTARC値は治療後には下がっていますので治療の効果として良い指標となります。
C赤ちゃんのアトピー性皮膚炎で血液検査をしてみますと食物アレルギーを示すお子さんが多くみられますが、実際には食物アレルギーの症状は出ていないお子さんがほとんどです。
D1歳未満の小児の重症のアトピー性皮膚炎では栄養状態が良くなくて低アルブミン血症を起こしやすいのですが、このような赤ちゃんに皮膚をきちんと治すだけで低アルブミン血症が改善して栄養状態が良くなります。
E小児のアトピー性皮膚炎では誤った民間治療やアトピービジネスが最も危険です。正しい治療が重要です。
Fアトピー性皮膚炎では皮膚は必ず良くなりますので少し良くなったからといって途中で塗るのを止めてしまうのはリバウンド(アトピー性皮膚炎の再燃)の大きな原因になります。
Gアトピー性皮膚炎の火事が大きな時には消防車並みのステロイドの塗り薬を使い、小さなたき火くらいの時にはバケツの水くらいのステロイドの塗り薬とを使うと良いのです。
Hプロトピック軟膏を使った時のピリピリとした刺激感を減らせる対策としては
 1)プロトピック軟膏を塗る皮膚の部分に前もって十分の保湿剤を塗って、その上からプロトピック軟膏を塗ると良いです。
 2)プロトピック軟膏を塗る皮膚の部分にステロイドの塗り薬で、しっかりと治療をして皮膚がきれいな状態になってからプロトピック軟膏を塗ると良いです。
I非ステロイド系抗炎症薬(塗り薬)は
 1)抗炎症作用は極めて弱く塗りますと接触性皮膚炎(カブし)を起こりやすい傾向があります。 
 2)非ステロイド系抗炎症薬は、アトピー性皮膚炎の標準治療ではなく、間違った治療になります。お母さんが非ステロイド系抗炎症薬の方がアトピー性皮膚炎に良いというのは誤解です。
J休憩時間は出来るだけ日陰で過ごし、必要ならば日焼け止めを塗ってお肌を守りましょう。
K汗はアトピー性皮膚炎の悪化因子ですので汗をかいたらシャワーで流しましょう。
Lアトピー性皮膚炎があっても普通の生活をすることが治療の目標です。副作用のない治療で快適な生活、かゆみでつらい生活をしない学校生活を普通に出来ることが目標なのです。
          小児アトピー性皮膚炎に対するProactive Therapyの有効性

TARCを指標に加えた治療戦略

成育医療研究センター 大矢 幸弘先生講演会より

@かゆみによる睡眠障害は皮ふからの体液の漏出による成長障害がありますので、ステロイドの塗り薬が重要になります。

A成長期(30才以上)のアトピー性皮膚炎が増えています。
 アトピー性皮膚炎がこどもの病気だったのは昔のお話です。

Bアトピー性皮膚炎は小児が34.7%・成人が65.3%の割合になっています。

Cアトピー性皮膚炎が大人になると自然に治るというのは間違いです。

D1980年〜1990年代のステロイドバッシング(ステロイドを使用しないでアトピー性皮膚炎を治すという考え方)全盛期時代のお子さんが成人になり、脱ステロイド療法を続けている結果として、治らずに苦しんでいる20代〜40代の大人のアトピー性皮膚炎が多いのです。

Eアトピー性皮膚炎は小児期に皮膚を良い状態に治療して、それを維持することが大切なのです。

F適切な強さのステロイドの塗り薬を、適時連日塗れば必ずアトピー性皮膚炎の発疹は消失するのです。

Gステロイドの塗り薬を塗っても良くならないケースは、アトピー性皮膚炎以外の病気の可能性を考える必要がありますし、あるいは入院治療が必要です。
アトピー性皮膚炎が重症な時には入院してしっかり治療するのです。

HProactive療法
 1)初めにステロイドの塗り薬を塗ってアトピー性皮膚炎の皮膚の発疹を消失させてから、次は週に2回位ステロイドの塗り薬を塗っていると重症のアトピー性皮膚炎に効果があります。

 2)タクロリムスの塗り薬を6週間連日塗ってアトピー性皮膚炎の発疹が消失したら、タクロリムスの塗り薬を週に2回予防的に塗っておきますProactive療法の方が、Reactive療法(アトピー性皮膚炎の発疹が出た時だけタクロリムスの塗り薬を塗る治療法)よりも再発が少なく、皮膚の良い状態を維持することが出来て、さらにさらに再発までの期間が長いのが特徴です。

 3)ステロイドのProactive療法でも同様に、Reactive療法よりも再発が少なく皮膚の良い状態が維持することが出来ます。
 ステロイドの塗り薬もアトピー性皮膚炎の発疹が出た時だけ塗るReactive療法ではなく、皮膚の状態が良い時でも週に1〜2回ステロイドの塗り薬を塗っておくProactive療法の方が良いことになります。

 4)アトピー性皮膚炎の発疹を消失させるための初めに使うお薬はステロイドの塗り薬の方がタクロリムスの塗り薬よりも効果は高い傾向があります。

 5)Proactive療法は、タクロリムスの塗り薬でもステロイドの塗り薬でもどちらでも有効です。

 6)ステロイドの塗り薬で始めるProactive療法の方がアトピー性皮膚炎の発疹を消失させる確率が高く、予防にも良いことがわかってます。

 7)Proactive療法をしている時の方が、アトピー性皮膚炎が再発した時の改善が良い傾向があります。

 8)Proactive療法はステロイドやタクロリムスの塗り薬を、アトピー性皮膚炎の発疹が消失するまで連日塗ります。
 その後にステロイドやタクロリムスの塗り薬と保湿剤を隔日に交互に塗ります。
 この状態で皮膚が良ければ、ステロイドやタクロリムスの塗り薬を3日に1回の塗り方に変更します。
 つまりステロイドやタクロリムスの塗り薬を1日塗ったら、2日目と3日目は保湿剤を塗るのです。
 このようにしてステロイドやタクロリムスの塗り薬の塗る間隔をゆっくりと空けていくProactive療法が有効なのです。

 9)Proactive療法の方がReactive療法よりも伸長の伸びも良く、血液検査のアレルギー要因を示すIgEの値も下がってきます。

 10)Proactive療法をしたお子さんは卵白アレルギーのIgEや牛乳アレルギーのIgEの値が下がってきますが、Reactive療法ではこの傾向はみられません。
 これはProactive療法の効果で、皮膚から食物が侵入して食物アレルギーを起こす機会が減るためです。
 皮膚がツルツルの良い状態だと食物アレルギーの原因食物が皮膚から入ってこないのです。

 11)Proactive療法を成功させるためには、見ても触れても湿疹が「ゼロ」の状態(皮膚がツルツルした状態)にしてから、Proactive療法を開始すると良いのです。

ITARC
  1) 皮膚が良い状態を維持出来る指標として血液検査の「好酸球数」や「LDH」や「TARC」がありますが、TARCが最も鋭敏な指標になります。

  2)アトピー性皮膚炎の重症化に伴って「TARC」の値が上昇します。

  3)アトピー性皮膚炎が改善してくると上昇していた「TARC」の値が下がってきます。
    
  4)皮膚の状態だけでなく血液検査によって「TARC」を測定することで、アトピー性皮膚炎が改善しているという客観的な判断が出来ます。
 
  5)皮膚の状態が良くなりますと、血液の「IgE」や「TARC」の値も下がってきますが、「TARC」は健常者の値(125くらい)まで下がってきますが、IgEは下がってきても健常者の値までは下がりません。

  6)「TARC」は乳児は基準値が高く「500〜1000くらい」で5才以降は「400くらい」が正常の基準値となります。

Jアトピー性皮膚炎は自然に治るとは限りません。
 成人の重症のアトピー性皮膚炎の多くは乳児期の発症です。

K乳児期のアトピー性皮膚炎は食物が皮膚から侵入して食物アレルギー招く恐れがあります。

Lアトピー性皮膚炎の「かゆみ」による「睡眠障害」が成長抑制を招く恐れがあります。

Mアトピー性皮膚炎の皮膚からの体液の漏出は低タンパク血症や低ナトリウム血症や下痢・発達障害を招く恐れがあります。

 
          重症化防止とその後の対策・小児科の立場から

国立病院三重病院

〜藤澤隆夫先生 講演会より〜


〜重症のアトピー性皮膚炎では〜

@強いかゆみがあります。このために次のような症状がみられます。
 A.眠れない
 B.落ち着きがない
 C.イライラしやすい
 D.集中できない

A外見上から起こる問題があります。
 A.外見が気になって外出できない
 B.外見からいじめられる

B適切な治療を受けていない可能性があります。

C赤ちゃんの場合は
 A.栄養状態が良くないので、低アルブミン血症や低ナトリウム血症や高ホルモン血症などをおこしてきます。
  これらの状態はステロイドの塗り薬を適切に使用するだけで改善します。
 B.栄養状態が良くないケースでは発達障害が強く出ることがあり、脳の委縮をおこしてしまいます。この発達障害はアトピー性皮膚炎の治療をしても正常には戻りません。

D誤った民間療法
 適切ではない民間療法をして重症化しているお子さんがいるので注意が必要です。

Eステロイドの塗り薬を長期に使用していますとステロイドの塗り薬の効きが悪くなるというのは誤解です。

F大きい火事には消防車、小さい焚火はバケツの水で「火」を消すのが適切な対応です。
重症の大きい火事のアトピー性皮膚炎には強めのステロイドの塗り薬が多めに必要ですし、軽症のアトピー性皮膚炎には弱めのステロイドの塗り薬を通常量で使用すればアトピー性皮膚炎の症状は防ぐ事が出来るのです。

 
      小児アトピー性皮膚炎によるProactive外用療法
小児アトピー性皮膚炎によるProactive外用療法

国立成育医療センター 〜大矢幸弘先生講演会より〜

@アトピー性皮膚炎皮膚炎の外用療法(塗り薬)は、アトピー性皮膚炎の湿疹が改善した後でも間欠的にステロイドの外用薬を塗って皮膚が良い状態を維持したまま、徐々に保湿剤を塗る日を増やしていくProactive療法が大切です。
二歳以上のお子さんでは、ステロイドの外用薬の代わりに、プロトピック軟膏を顔につけるProactive療法も有効です。

AProactive療法のほうが、湿疹が悪化した時だけステロイドの外用薬を塗るReactive療法よりもアトピー性皮膚炎の再発が少ないというメリットがあります。

BProactive療法中に、アトピー性皮膚炎が急に悪化したら、ステロイドの外用薬を一定期間塗り続けて湿疹の改善をします。
その後、よくなってからProactive療法に戻ればよいのです。ここで重要なことは、Proactive療法で皮ふの良い状態を維持していた方が、アトピー性皮膚炎が再発した時にステロイドの外用薬やプロトピック軟膏の効果が良く出るという特徴があります。

C例えばステロイドの外用薬やプロトピック軟膏の外用薬を連日使用して、お肌がきれいになりましたら、一日おきにステロイドの外用薬やプロトピック軟膏の外用薬を保湿剤と交代(隔日)に塗り替えてみます。これでProactive療法の開始となります。この状態をしばらく続けて、お肌がきれいであれば2日おきにステロイドの外用薬やプロトピック軟膏を塗る方法に切り替えて、ゆっくりとステロイドの外用薬をプロトピック軟膏の外用薬を塗る期間を少しずつあけていきます。

DProactive療法は伸長ののびは良いです。

EProactive療法を進めていきますと、アレルギー反応の原因を示す総IgE値が次第に下がっていきます。

FProactive療法治療を進めていきますと、卵や牛乳に対するアレルギー原因を持つ卵白IgE値や牛乳IgE値が次第に下がっていきます。

Gすなわち、アトピー性皮膚炎のお肌をきれいに維持していた方が、食物アレルギーが改善するという効果があります。

HProactive療法は湿疹がゼロになってから初めて開始するのが大切です。

I重症のアトピー性皮膚炎では、はじめはステロイドの外用薬を塗って、お肌がきれいになってからステロイドの外用薬をプロトピック軟膏を併用すると良い傾向があります。

J顔のアトピー性皮膚炎は、湿疹が消失したらプロトピック軟膏の外用薬のProactive外用療法を開始します。具体的には、ステロイドの外用薬を塗ってお肌が良くなったらプロトピック軟膏をしばらく塗って、その後間隔をあけてステロイドの外用薬を塗り、さらにその後、プロトピック軟膏に変更します。
これを繰り返していき、ステロイドの外用薬をプロトピックの外用薬を塗る間隔を少しずつのばしていきます。

KProactive外用療法で最も大切なのは、ステロイドの外用薬やプロトピック軟膏の外用薬できれいになっても、その後も保湿剤を塗り続けることです。
    アトピー性皮膚炎の管理

 〜神奈川県立こども医療センター 馬場 直子先生講演会より〜

@アトピー性皮膚炎とは〜
a)かゆみのある湿疹です。
b)悪くなったり、良くなったりを繰り返しています。
c)生まれつきの素因をもっています。

A貨幣状の苔癬化型のアトピー性皮膚炎(island type)は、島状に部分的にアトピー性皮膚炎がみられているために
真菌(カビ)と間違われることが多いので、注意が必要です。

Bアトピー性皮膚炎のお子さんの爪がピカピカ光っていたり、爪が短くなっている、爪を切ったことがないといったことがある場合は、お子さんはかなり頻回にお肌をひっかいているサインとなります。

Cアトピー性皮膚炎の原因は
a)アレルギーが関与しています。
b)皮膚のバリア機能障害(お肌を守る力が、低下しています。)があります。
例えばドライスキン(乾燥肌)もその一つです。

Dアトピー性皮膚炎の治療は
a)アレルギーの原因となるアレルゲンの回避です。
b)スキンケアです。

Eスギ花粉で、顔にアトピー性皮膚炎が出るお子さんがいます。

F日光で日焼けして、顔にアトピー性皮膚炎が出るお子さんがいます。

Gドライスキンがありますと、かゆみを感じる神経が皮膚の浅いところに伸びてきて、かゆみを感じやすくなっています。

Hアトピー性皮膚炎は、体の中でも出っぱっているアゴやオデコに湿疹が出やすい傾向にあります。

Iアトピー性皮膚炎のスキンケアは
a)皮膚を清潔にするスキンケアが大切です。石けんで洗うことが重要です。
b)皮膚をこすりすぎると、皮ふのバリア機能が壊れてしまうので、基本はこすらず、優しく洗うことが重要です。
c)バスタブに浸かると、かゆみが増してしまい、皮膚を守っている皮脂膜も落としてしまうので、熱いお湯は避けて、シャワーが良いと思われます。
d)入浴後15分くらいで、保湿剤を塗ると良いでしょう。こすらず、優しく、たっぷりと塗ると良いでしょう。
e)保湿剤はお肌の「水分保持」、「バリア機能の補強」、「軟化しやわらかくする作用」があります。
f)尿素製剤の塗り薬は、お肌のバリア機能を破壊してしまうことがありますので、 アトピー性皮膚炎ではあまり使わない方が良いでしょう。
g)食物アレルギーも皮膚から食物が侵入しておこることが多いので、スキンケアは重要になります。
h)食物アレルギーも気道アレルギー(ぜん息)も、皮膚からアレルギーの原因であるアレルゲンが侵入しておこるのではないかと考えられています。
i)ピーナッツアレルギーは、母乳中のピーナッツではなく、家庭内のハウスダストの中のピーナッツ含有量によって食物アレルギーがおこっています。
j)アトピー性皮膚炎が重症のお子さんでは、ステロイドの塗り薬を塗った後にその上から亜鉛華単軟膏を重ねて塗り、その上からカーゼ等で被うと効果が上がります。
この様に湿疹の部分を被うことで直接かかなくすることが出来て、局所のひどい苔癬化や顔のびらんに効果があります。
k)重症のアトピー性皮膚炎では、初めにステロイドのぬり薬を使い、すこし良くなったらプロトピック軟膏へ変更すると良いでしょう。
さらに良くなりましたら、「プロトピック軟膏」か「ステロイドのぬり薬」を週1日だけぬり、残りの6日は保湿剤にする「プロアクティブ療法」が良いでしょう。
プロアクティブ療法とはアトピー性皮膚炎の再燃が少ない治療法ですので、より良いアトピー性皮膚炎の治療と言えます。
この治療をしたときには、最低でも6ヶ月は継続が必要です。
6ヶ月を過ぎましたら、週1日塗っていたプロトピック軟膏を止めてみて、アトピー性皮膚炎の症状が出てくる場合は継続が必要です。
症状が出なければそのまま中止して、保湿剤だけで良いでしょう。
l)1日2回の保湿剤をぬっておきますと、全く保湿剤をぬらないお子さんに比べ、アトピー性皮膚炎の再燃を抑制することができます。
お肌の調子が良い時でも、保湿剤を塗っておくことが大切です。
    意外なアトピー性皮膚炎の治療の誤解!

アトピー性皮膚炎が良くならないとクリニックに来られる方は意外にいらっしゃいます。
いくつか気が付く特徴があります。皆さんはいかがですか?

1、ワセリンを塗っているのにアトピー性皮膚炎がまったくよくないといわれるお母さんは……

a.アトピー性皮膚炎の皮膚の状態が良い時にワセリンやヒルドイドソフトなどの保湿剤を塗ってお肌のスキンケアをするのは正しい治療法です。

b.ところが、アトピー性皮膚炎の皮膚の状態が悪化している時に、ワセリンやヒルドイドソフトを塗っても効果はありません。
アトピー性皮膚炎が悪化している時には適切なステロイドの塗り薬を塗ってアトピー性皮膚炎の火事を鎮火してあげるとお肌は良くなります。

c.ステロイドの塗り薬を一週間ほど塗っていただいて、お肌が改善しましたらその次の週はステロイドの塗り薬とワセリンやヒルドイドの保湿剤を隔日で塗ります。
1日目はステロイドの塗り薬で2日目は保湿剤、3日目はステロイドの塗り薬、4日目は保湿剤といった形です。

d.一週間これを継続して、お肌が良い状態なら、今度はステロイドの塗り薬を1日塗って、2日目と3日目は保湿剤を塗ります。
これを繰り返していって、ステロイドの塗り薬が一週間に一日までに間隔があいて、お肌の状態が良いようでしたら今度は保湿剤の塗り薬のみをしてみます。

e.この間隔的にステロイドを塗っている時や保湿剤だけを塗っている時に、お肌に部分的にアトピー性皮膚炎が悪化した場合は、その部分にステロイドの塗り薬を1週間ほど塗ります。

f.基本はこれだけです。皆さんも試してみませんか。
  乳幼児アトピー性皮ふ炎
大阪府済生会中津病院
  末廣 豊先生 講演会より


*0才の時の皮ふをきれいにすることが、その後のぜん息の発症の予防になります。
1才過ぎのお子さんでは、かゆみ止めを早期に使用することで、その後のぜん息を起こしにくくすることができます。

*乳児の早い時期から食物を食べていくことで、食物アレルギーを起こしにくくすることができます。
アトピー性皮ふ炎でも、離乳食は生後6ヶ月から通常通りに開始したほうが良いでしょう。
食物アレルギーを気にしすぎて、アトピーの赤ちゃんの離乳食の開始を遅らせるのはかえって良くありません。

*アトピー性皮ふ炎のお子さんをお持ちのお母さんが最もストレスを感じるのは、お子さんの皮ふの「掻き破り」をみることです。
重症のアトピーでは、ぬり薬を十分にぬれていないと感じるお母さんが多く、そうしたお母さんほどお子さんの「掻き破り」をみてストレスを感じています。
多くのお母さんが、お子さんの「掻き破り」を止めさせることが最も難しいと感じています。
「掻き破り」のひどいお子さんに対して、叱ってしまうことが多い傾向にあります。

*ステロイドのぬり薬をぬれていないと感じるお母さんは、ステロイドに対しての不安を感じている事が多いようです。
ステロイドを使うと皮ふが黒くなるという誤解がとても多くありますが、皮ふの炎症が慢性的におきているために皮ふが黒くなるのです。
つまりステロイドの影響ではなく、治療が不完全だと皮ふが黒くなるのです。

症状が重い急性期はステロイドのぬり薬をしっかり使用し、症状が落ち着いた維持期にはプロアクティブ療法(ステロイドを週に一日だけ使用したり、プロトピック軟膏を使って皮ふの良い状態を保つ治療法)
を併用するのが良いでしょう。

      内服薬の「かゆみ止め」の使い分け
国立病院機構三重病院 藤澤隆夫先生 講演会より

*小児の「かゆみ止め」の内服薬
a:鎮静性(眠気の強いもの)のタイプは使用した場合、学校での勉強が集中できなくなり「学習能力」が下がってしまいます。
b:非鎮静性(眠気のでない)のタイプのものは「学習能力」の低下をおこさずにアトピー性皮ふ炎の「かゆみ」を改善します。
c:非鎮静性のタイプのものを使用していると「ステロイドの塗り薬」の使用量を減らすことができます。
d:「かゆみ止め」はアトピー性皮膚炎では効果がありますが治療の主役はあくまで「ぬり薬」です。
e:アトピーのお子さんでは「ぜん息」に移行するお子さんがみられますが、まだ「ぜん息」になってないお子さんが「かゆみ止め」を飲んでいると「ぜん息」を発症するのを予防する効果があります。
 
 
治療で最も大切な事
~りかこ皮膚科クリニック 佐々木りか子先生講演会より~

生まれて間もない赤ちゃんから10才くらいまでは、皮ふが乾燥しているのでスキンケアが必要です。

朝起きたとき、お子さんの顔にはだ液や涙、汗がついていますので、これらを濡れたやわらかいタオルでふき取ることが重要です。
(だ液が口のまわりについていると、それだけで「かぶれ」てしまいます。)
この時、顔だけでなく、首まわりもふいてあげましょう。何回ふいてもかまいません。
ふいた後は必ず保湿剤をぬりましょう。

お子さんの体は「皮ふ」で守られているという意識が大切です。そのためには保湿が重要です。

お子さんのアトピー性皮ふ炎は、1〜2ヶ月に一度の定期的な診察が重要です。
アトピーの調子が良いときにこそ診察させて頂けるのが重要です。
お母さんと治すアトピー性皮ふ炎
〜愛育病院 山本一哉先生講演会より〜

@生後7日目からスキンケアを開始すると皮ふの保湿が保たれ、アトピー性皮ふ炎の発症を防ぐことができます。
この場合のスキンケアとは、市販のスキンケア用品ではなく、お薬の保湿剤が必要です。

出来るならば生後24時間以内に保湿をするのが最も望ましいのです。
何故かというと、生まれた時に赤ちゃんの体をおおっている胎脂が、生後24時間後には拭きとらずとも消えてしまい、ここから皮ふの乾燥が始まるからです。

Aアトピー性皮ふ炎のお子さんには、お薬をぬらなければ良くなりません。
まず「お薬をぬりましょう!!」

B「朝、赤ちゃんのお顔を拭きましょう」
今のお母さんは、朝赤ちゃんのお顔を拭かないことが多いようです。
寝ている間にお顔にいろいろな汚れがつくので、これをきれいにふき取ってから保湿剤をぬりましょう。

C保湿剤のローションは全身にぬりましょう。
アトピーの発疹のない所にもぬりましょう。

Dアトピー性皮ふ炎では「治ったように見えても実は治っていません」
皮ふがきれいな時でも保湿剤をぬって治療を続け、気を抜かないことが一番大切です。

「Proactive療法」
アトピー性皮膚炎における抗炎症外用薬
「Proactive療法」
  国立成育医療センター 大矢先生 講演会より

@アトピー性皮膚炎では発疹や痒みがない時は、調子が良いと思いがちでスキンケアーが面倒になる傾向があります。
 
Aアトピー性皮膚炎では発疹がない時でも治療(ぬり薬)を継続する必要があります。
皮膚の状態が良い時でも、間欠的(例えば週1日はステロイドのぬり薬を使い、あとの6日間は保湿液をぬる)やプロトピック軟膏のぬり薬を週1〜2日間ぬる事が皮膚のよい状態を維持するのに効果があります。
このような治療を「Proactive療法」といって最新のアトピー性皮膚炎の治療になります。

Bアトピー性皮膚炎の発疹が消失しても、治っているわけではないので「Proactive療法」が必要です。
調子が悪い時(発疹)だけステロイドを使うのは「Reactive療法」といって良い治療法とはいえません。

Cアトピー性皮膚炎の重症例ほど「Proactive療法」が有効です。

D例えば週1回プロトピック軟膏をぬる「Proactive療法」を続けているとアトピー性皮膚炎の再発が少なくなります。
さらに続けていくと血液中にある、アレルギー要因「IgE」の値が著明に低下していきます。
またお子さんの身長の伸びがよくなります。
このような良い効果は「Reactive療法」にはみられません。

E「Proactive療法」を続けると血液中のアレルギーを示す卵と牛乳の「IgE」値が下がっていきます。
「Proactive療法」の方が「Reactive療法」より経過が良くなるのです。

Fアトピー性皮膚炎では、発疹が消失して見かけ上きれいな皮膚になっても、保湿剤のぬり薬を使い続けることが、経過がよい状態をとります。(これも「Proactive療法」です。)

G保湿剤は、アトピー性皮膚炎の発疹がひどかったところに重点的にぬると良いことがわかっています。
 
小児アトピー性皮ふ炎の予防と食物制限 
〜国立成育医療センター大矢幸弘先生 講演会より

0才の時に湿疹があると、その後に食物アレルギーになる確率が高くなります。
(0才時の湿疹は食物アレルギーの危険因子になります。)
赤ちゃんの時の湿疹を早く治すことで、ヒフからのアレルギー(経皮感作)を予防することが出来るかもしれません。

ヒフから吸収されて起こるアレルギー(経皮感作)は食物アレルギーを促進し、逆に口から食物が入って起こるアレルギー(経口感作)は
食物アレルギーを緩和する傾向があります。
「経皮感作」をおこすとその後食物の摂取によって食物アレルギーを起こしますが、全てのお子さんがなる訳ではなく、食物の「経口感作」によって
食物アレルギーにならずにすむお子さんもいます。


妊娠中のお母さんの食物制限(卵、牛乳)は、生後12ケ月〜18ケ月のお子さんのアトピー性皮ふ炎の発症への予防効果はありません。
それどころか、赤ちゃんの出生体重を約100g低下させてしまいます。
授乳中のお母さんの食事制限も同様に、お子さんへのアトピーの予防効果はありません。

「お子さん自身」に牛乳や卵などの離乳食の開始を遅らせても、牛乳や卵の食物アレルギーの発症を予防する効果はありません。
逆に、離乳食の開始が遅いほど、アトピー性皮ふ炎や気管支ぜん息の発症が多くなります。

生後5ヶ月〜7ヶ月の早い時期に離乳食を開始すると、その後のアレルギーの病気の発症を予防する効果が期待できます。
例えば、ピーナッツアレルギーの有病率は、英国ではイスラエルの10倍になります。
イスラエルの子供は乳児期から早期にピーナッツを摂取していますが、英国の子供は逆に、遅い時期からピーナッツを摂取しています。

         アトピー性皮膚炎患者さんへの一言メッセージ
東京逓信病院皮膚科 江藤隆史先生 講演会より

アトピー性皮膚炎の患者さんで、ステロイドのぬり薬を使いたがらない方の多くは、次の副作用を心配しています。

@顔が丸くなる
A骨がもろくなる
B色が黒くなる
C光に当たって異常な反応を起こし、黒くなる
D皮膚が象のように硬くなる・厚くなる

実はこの中で、ぬり薬で起こる副作用は、強力なステロイドを長期(例えば一ヶ月半)全身に使い続けた時に、非常にまれですが、@とAが起こる可能性があります。通常の治療では、強力なステロイドを長期に大量にぬることはありませんので、@もAも起こらないはずです。アトピー性皮膚炎の火事が治った後の色素沈着はありますが、B・C・Dについては、全くありません。

1.ステロイドのぬり薬の使い方で最も重要なことは、一定量を一定期間、きちんとぬることです。少し使ってよくなるとやめてしまい、また少しぬってよくなるとやめてしまうということを繰り返していると、皮膚は中途半端な火事の状態が続いてしまい、まるで炭火のような火事になり、皮膚の色が黒く厚くなり、いわゆる「苔癬化(たいせんか)」という状態になり、皮膚が厚ぼったく黒くなるのです。
従って、「ステロイドのぬり薬で皮膚が黒くなる・厚くなることは絶対にないので、しっかり使いましょう」ということが大切です。

2.しっかりしたぬり薬の治療はどのように行うのか、ということですが、finger tip unit (FTU) といって、指先から第一関節までのばして乗せたぬり薬の量が0.5gで、この量で手のひら2枚、つまりちょうど顔の大きさになりますが、このようにぬった時のベトベト感をまず実感して下さい。つまり、「finger tip unit をしっかり行うこと」が大切です。

3.プロトピック軟膏(主に顔面に使用する新しいアトピーのぬり薬)は、リンパ腫という病気になるのではないか、怖い薬ではないかなどといろいろ言われますが、このぬり薬は正常な皮膚には入りません。従って、正常に近いよい状態を保つためには、ステロイドのぬり薬をぬり続けるよりは、プロトピック軟膏をぬっていれば、皮膚の穴のあいたところ(アトピー性皮膚炎の火事のあるところ)だけをふさいでくれるような治療になります。
プロトピック軟膏は、週2〜3回ぬれば、十分によい状態を保ってくれるのです。
「プロトピック軟膏は安全です」

4.きちんと治療をして、ある程度良くなれば、ステロイドのぬり薬はいりません。プロトピック軟膏もいらなくなります。保湿剤だけでよいのです。スキンケアさえしていればよいのです。
「よくなってもスキンケアは継続しましょう」
        アトピー性ヒフ炎の難治性のかゆみ
難治性のかゆみにはヒフが原因のものと、ヒフ以外に原因があるものに分かれます。
ヒフが原因のかゆみに対しては、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬がよく効きますが、ヒフ以外に原因がある場合にはこの薬は効きません。

ヒフに伴うかゆみのポピュラーな病気がアトピー性ヒフ炎です。
アトピー性ヒフ炎のように乾燥肌がある場合、かゆみを感じる神経がヒフの浅い所まで伸びているので、外からの刺激に敏感になっています。
また、かゆい所をかくことで痛みが起こり、その刺激がさらにかゆみを誘発します。
特にアトピー性ヒフ炎の患者さんのヒフ表面には溝ができていて、外からの異物が入りやすく、ヒフの水分も抜けやすい状態になっています。
ですので、保湿をすることでヒフの表面にうすい膜を作り、ヒフへの刺激を減らすことがとても重要です。


ヒフ以外が原因の難治性のかゆみでのヒフの状態は、かきこわしによる傷のみです。
ヒフが原因のかゆみのように赤くなったり、じんましんのようになったりはしません。
      アトピー性皮膚炎
近年特に増加しているアレルギーの病気です。
症状は早い時には1〜3ヶ月の、生まれて間もない
赤ちゃんからみられます。
かさかさした肌で赤ちゃんのようなすべすべした
きれいな肌でないのが特徴です。
よくお母さん方は「乳児湿疹がなかなか治らない」と言って来院されますが、その多くはアトピー性皮膚炎なのです。適切な治療をきちっとおこなえば赤ちゃんのアトピーは早く治すことが出来るのです。
続き
重症のアトピーの赤ちゃんをお薬で治していますと、
お母さんはお肌がきれいになってから、「夜泣きしなく
なった」とか「昼間ぐずらなくなった」
というお話をよく耳にします。
赤ちゃんは言葉が話せませんから「かゆみ」を
「ぐずり」や「夜泣き」で表現していることが多いのです。
続き
治療はステロイドのぬり薬が主体になります。
アトピーの症状が重い時に、ワセリンやヒルドイドなどの保湿剤だけをぬっても全く効果はありません。
皮膚の状態に合わせて適切なステロイドのぬり薬を
きちんと適切な量と適切な日数を使用することが
大切なキーポイントです。
皮膚の表面にアトピー性皮フ炎がひどい時には、
その皮膚の下の皮下の部分も炎症をおこしています。
ぬり薬は、一番表面のところから効果が出てきますが、
皮膚の表面がきれいになってもそれでぬるのを
すぐに止めてしまうと皮下の部分の炎症は
治ったことにはなりません。
続き
皮膚の表面だけではなく、皮下の部分の炎症を治さないと
アトピーは治らないのです。つまり皮膚表面がきれいに
改善しても、その後一定の日数はぬり薬をぬりつづけないと
皮下の部分の炎症は治りません。
よくあることですが3日つけてよくなったのが
ステロイドのぬり薬を止めたところ、その後すぐに皮膚炎が
悪化したというのは、ぬる日数が足りないのです。
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それに加えて一回のぬる量も大切です。
私は外来でこのくらいぬりましょうとぬる量を
患者さんのお母さんにお見せしていますが、
しっかりした量を一回にぬらないと効果は
出ません。一回量があまりに少ないといくら
効果のあるステロイドのぬり薬でも効果は
出ません。
続き
ステロイドのぬり薬でよくなったら、初めて保湿剤に切り替えが可能です。ステロイドのぬり薬でせっかくよくなってもその後のスキンケアが全くされないとアトピーはよくなりません。アトピー性皮フ炎のこどもの皮膚は乾燥していて、水分含有量が正常児と比べてはるかに少ないので、水分補給のための保湿剤が必ず必要になります。
続き
さらに、保湿剤には皮膚のかゆみをおさえて、
アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ効果があります。
また保湿剤をぬることで皮膚の表面に膜が出来て、
外からのバイ菌の侵入を防ぎアトピー性皮膚炎に
よくみられる合併症を予防することが出来るのです。
アトピーの治療は皮膚炎がみられている時も治療が
必要ですが、一番大切なのは皮膚炎がなくなった
ときの「保湿」というスキンケアが重要なのです。
アトピーは夏によくなる傾向がありますが、
夏に保湿をしっかりとしておくとその冬の
アトピーの悪化を回避することが出来るのです。
乳幼児ではアトピー性皮膚炎の治療はぬり薬が
主体ですが、かゆみの強いケースでは
かゆみ止めののみ薬が必要になります。
続き
アトピーのこどもたちの皮膚は乾燥しているため
かゆくなりやすい傾向があります。
かゆいとかく→かくとアトピーが悪化する→夜よく
眠れない→夜間の成長ホルモンの分泌が減り、
背が充分に伸びないという悪循環に陥ります。
「かゆみ」はなるべく早く治すことを心がけましょう。
続き
顔のかゆみの強いアトピーは、顔面をかくため眼球を傷つけることが多くなります。2歳以上であれば目の周囲に「プロトピック軟こう」というぬり薬がよく効きます。
プロトピック軟こうは健康な皮膚には吸収されませんが、アトピー性皮膚炎の部分のみに吸収され、
かゆみや炎症を治します。
使用はじめの1週間ぐらいはぬった後に「ピリピリ感」
が出ますが、それをこえるとそのピリピリ感も消失して
アトピーがよくなります。
続き
眼球をひっかくことで傷つけてしまうと、将来に白内障や網膜剥離の合併症をおこすことがあり、場合によっては失明する可能性があります。
顔、特に目周囲のアトピーには注意が必要です。
また重症のアトピーでは、悪性リンパ腫にかかる確率が高くなることが最近言われています。適切な治療を行うことで、こどものアトピーは治すことが可能なのです。是非とも合併症のリスクを回避して、こどものストレスをとるためにもアトピーの治療は重要なのです。

アトピー性皮膚炎の要因について

@食物アレルギー・ダニ
乳児期に多いのが食物アレルギーで、2歳以降はダニが多いです。

Aかゆみ
かゆいのでかく、またかゆくなるのサイクルをおこします。

Bストレス
何らかのストレスがあると、アトピーは悪化します。
  *ストレスによる舌なめずり皮膚炎というものもあります。

C汗
汗をかくと、汗の刺激で悪化します。赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、汗をかくとすぐあせもになりやすい傾向があります。
こまめに肌着やオムツを取り替えましょう。

小学生や幼稚園児などはシャワーで汗を流すだけでも効果的です。

D石鹸、シャンプー
中に入っている成分によっては悪化します。

E温泉とプール
アトピー性皮膚炎の調子がいいときには温泉やプールに入っても大丈夫ですが、調子の悪いときに入ると悪化します。

F日焼け
赤ちゃんの肌はデリケートなので、紫外線があたると日焼けをおこします。夏場でなくても、春先から日焼けをおこしやすくなります。
アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは、より一層日焼けしやすいので、日焼け止めが春先から必要です。保湿剤の下塗りをしたその上に日焼け止めを塗ると、かぶれにくいのでおすすめです。

G「虫さされ」と「とびひ」
アトピー性皮膚炎の赤ちゃんの肌はヒフの防護機能が弱いので、外からばい菌が入りやすくなっています。「虫さされ」の部分をかき壊すと、その傷口からばい菌が入り「とびひ」になってしまいます。「虫さされ」の時に早めにぬり薬を使って治し、「とびひ」にならないようにすることが大切です。
また、防虫グッズも上手に使いましょう
「虫さされ」や「とびひ」はアトピー性皮膚炎を悪化させてしまいます。

Hお腹の調子とアトピー
アトピー性ヒフ炎の赤ちゃんは下痢になるとアトピーが悪化することがあります。
アトピー性ヒフ炎の難治例ではお腹の調子を良くする整腸剤を内服すると改善がみられるケースがあります。
どうもお腹の状態とアトピー性ヒフ炎のヒフの状態は関連があるようです。(お腹の中の免疫が関連してると思われます。)

症例写真

*舌なめずり皮膚炎
文字通りお子さんが自分の舌で口の周りをなめることでおこる「かぶれ」です。
お子さんに不満やストレスがあると起こります。
例えば、お母さんが下の子ばかりかまう事で不満がつのり皮膚炎をおこしたりします。
お子さんが満足するように意識的に抱っこしたり、ほおずりしたりして愛情をそそいでいることを伝えるのが効果的です。

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